研究課題/領域番号 |
16K08529
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
金丸 みつ子 昭和大学, 医学部, 准教授 (40255716)
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研究分担者 |
泉崎 雅彦 昭和大学, 医学部, 教授 (20398697)
吉川 輝 昭和大学, 医学部, 助教 (90737355)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | セロトニン / オプトジェネティクス / 睡眠-覚醒 / CO2 / 疼痛 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、抑制性光活性化タンパク質のアーチロドプシンをセロトニン神経選択的に発現させたマウスを用いて、自由行動下で脳局所の光操作により睡眠―覚醒及び呼吸の測定を行った。また、ホールボディプレチスモグラフチャンバー内のガスをCO2ガスに切り替える方法を検討した。100%O2ガスから9%CO2ガスへ切り替えて、緩やかで再現性の良い経時的CO2ガス濃度変化を確認したものの、導入ガスのチューブの差し替えやY字のジョイントを使用した流量調整によるガスの切り替え等を検討したが、CO2濃度が上がる前にマウスが覚醒してしまうため、更なる検討が必要である。一方、睡眠―覚醒解析用の小動物用送信器の数に限りがあり、手術後の回復期間と1日に測定できる個体数が限られるため、同時に多くの動物の解析をすることは難しいと考えられた。そこで、中枢のセロトニン神経の分布と光活性化タンパク質の存在を生理的に確認するために、今回は疼痛評価を用いて、既に安定的に導入が進んでいるチャンネルロドプシンをセロトニン神経選択的に発現させたマウスにおいて、オプトジェネティクスによる延髄縫線核のセロトニン神経の効果を検討した。その結果から、脳内セロトニン神経に光活性化タンパク質を発現させる本マウスの系統は、遠隔操作による光照射システムを用いたオプトジェネティクスの手法により、昨年報告した橋に加えて延髄のセロトニン神経の研究においても有効であることが明らかとなった。また、延髄縫線核のセロトニン神経は、熱的疼痛に対する下行性疼痛抑制への関与が示唆された。平成29年度に得られた結果は、同年度の日本生理学会大会にて発表した。今までの結果をもとに、睡眠時無呼吸症候群の神経化学的視点から延髄セロトニン神経について、日本薬理学雑誌に総説として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度はアーチロドプシン(抑制性光活性化タンパク質)をセロトニン神経選択的に発現させたマウスの導入・繁殖・維持ができるようになった。そこで、これらのマウスにCO2吸入を行うために、ホールボディプレチスモグラフチャンバー内をO2ガスからCO2ガスに切り替える方法を検討した。また、アーチロドプシンは持続的な光照射により操作できる受容体なので、光刺激条件と睡眠-覚醒のパターンも検討した。いくつか問題があり、ガス吸入や光刺激の条件はまだ検討中であり、やや遅れている。そこで、既に光刺激条件等の確立が先行している、別の光活性化タンパク質を発現させたマウスで、延髄セロトニン神経の役割について生理的応答を確認し、既に検討済みの橋のセロトニン神経に加えて、延髄のセロトニン神経にも光活性化タンパク質が発現しており、生理的な研究に適用できることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
抑制性光活性化タンパク質(アーチロドプシン)を発現させたマウスにおいて、平成29年度の検討を元に、 1)O2ガスをCO2ガスに切り替えることによるマウスの覚醒の原因を究明する。2)1)の問題を解決し、CO2ガスによる睡眠-覚醒や呼吸への効果を検討する。3)睡眠-覚醒を調節できる緑色光刺激条件を検討する。4)3)の検討後、緑色光刺激による2)への影響を検討する。 以上の実験系を用いた結果から、CO2による睡眠-覚醒と呼吸調節に対する脳内セロトニン神経の役割や関連脳部位や受容体について解析する。これらの成果は国内外の学会で発表し、論文として報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、研究がやや遅れており、研究成果発表の旅費と、初年次の繰越金が残ったためである。
使用計画は、光刺激用のLEDカニューラや脳波・筋電図トランスミッター再生等の物品費にあてる予定である。
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