研究課題/領域番号 |
16K08532
|
研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
増渕 悟 愛知医科大学, 医学部, 教授 (80362771)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 低酸素 / 行動リズム / 時計遺伝子 / 担癌マウス |
研究実績の概要 |
担癌動物(Balb/c, nu/nu)の作成および解析を引き続き行い、統計学的解析を可能とするための例数を増やした。行動リズムの明暗周期からの脱同調すること、リズム周期が恒常暗条件下で変わらないことを確認した。光入力が原因として予想されるため網膜の観察を行ったが形態学的な変化を見出すことはできなかった。 一方、担癌動物の腫瘍内低酸素細胞のリズム評価に関連して、1日のうちでの様々なタイミングでの低酸素自体がマウス個体の行動パターンを変化させることを見出した。明期開始から9hの低酸素はそれに続く暗期の活動量の上昇を抑制し活動終了期の活動量を上昇させた。この2相性の反応は明暗条件下で活動量の日内変動を示している時計遺伝子欠損マウスにおいても見られた。このマウスでは恒常暗条件に移行すると活動量の日内変動が消失するが、2相性の反応は明暗条件下から恒常暗条件に移行した直後においてのみ見られた。これにより、2相性の行動変化は活動量の日内変動が存在するならば時計遺伝子は必要ないことが明らかとなった。明期の低酸素暴露直後の前脳mRNA網羅的解析によりこの2相性の行動変化を調節する因子が2つ明らかとなった。明期の低酸素は脳内の睡眠物質として知られる生理活性物質のレベルを低下させた。さらにこの生理活性物質の阻害剤を明期の開始時に投与することにより明期の低酸素によりみられた2相性の行動変化と同様の行動変化が見られた。一方、明期の低酸素は中枢神経を活性化するホルモンレベルの上昇をもたらした。このホルモンの合成阻害により明期の低酸素による暗期の活動量の上昇の抑制が大きくなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
担癌マウスの活動リズムの明暗サイクルからの脱同調を安定的に再現することができた。低酸素暴露による個体レベルでの行動変化のメカニズムが明らかとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き担癌マウスを作成し、腫瘍内リズム構築の解析を行う。また担癌マウスの明暗周期からの脱同調の原因を検索する。低酸素暴露による個体レベルでの行動変化解析の結果を論文として発表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
行動リズム測定のため動物隔離ユニット(アクトラック)を作成する予定であったが、他施設からの贈与を受けることができたため次年度使用額が生じた。次年度使用額は担癌マウス作成、解析に用いる。また、低酸素暴露マウスの行動研究結果につき論文の投稿、掲載料及び国際学会での発表を行う。
|