研究課題
子宮収縮および射乳反射を引き起こすオキシトシン(OT)が、近年、社会行動や摂食行動を調節する因子として注目されている。本研究では、摂食抑制モデルを用いて、嗅球におけるOTの生理学的役割および情報伝達機構の特性を明らかにすることを目的とした。平成28年度は、シスプラチン誘発性摂食抑制モデルにおいて、OT産生部位である視床下部視索上核(SON)および室傍核(PVN)、さらにOT細胞の投射先である延髄孤束核(NTS)にFos蛋白の発現が認められ、OT-mRFP1遺伝子改変(Tg)ラットにおいては、蛍光輝度の増加が見られた。これらの発現はOT受容体拮抗薬の投与により有意に減弱した。この成果は、英語論文としてJPSに掲載された。平成29~30年度は、シスプラチン誘発性摂食抑制モデルラットの嗅球(OB)におけるFos蛋白の発現の有意な変化は見られなかった。抗がん剤シクロスポリンによる摂食抑制モデルラットを検討したところ、シスプラチンよりも強力に摂食を抑制したが、OT細胞においては有意な変化は見られなかった。神経ペプチドXeninは強力に摂食抑制を引き起こす。そこで、Wistarラット脳室内にXeninを投与し、脳内のFos蛋白の発現を調べた。OBにおいては特にFos蛋白の著明な発現は認められなかったが、SON、PVNおよびNTSにFos蛋白の発現が認められ、OT細胞において、Fos蛋白の発現が有意に増加していた。この成果は、英語論文として、現在投稿中である。代謝ケージ飼育下におけるOT細胞の活動性を調べた。代謝ケージ飼育開始直後~4日間は、コントロール群と比較して摂食量は著明に減少した。OT-mRFP1-TgラットのSONおよびPVNにおいて、コントロール群と比較し飼育開始1日後に蛍光輝度は増加したが、2~4日後には減少した。OBにおける蛍光輝度の動態変化は現在解析中である。
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