研究課題/領域番号 |
16K08539
|
研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
内山 奈穂子 国立医薬品食品衛生研究所, 生薬部, 室長 (60392297)
|
研究分担者 |
有竹 浩介 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 准教授 (70390804)
マリシェフサカヤ オリガ 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 研究員 (20739429)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 睡眠 / 覚醒 / 痙攣 |
研究実績の概要 |
我々は,カンナビノイドの睡眠調節に及ぼす作用の解析を目的として,予備的な検討の結果,大麻由来カンナビノイド (Δ9-tetrahydrocannabinol; Δ9-THC)をマウスに投与すると有意な自発運動の抑制が認められたので,この作用について,脳波解析による詳細な検討を開始した.解析には,所属する研究グループが開発した,小動物脳波・行動解析システムを用いてΔ9-THC或いは合成カンナビノイド (JWH-018) を投与したマウスの脳波と自発運動量の変化を調べた. Δ9-THCを10mg/kgの用量で,予め脳波測定用電極を施術して,1週間以上馴化させたC57BL/6系雄性マウスに腹腔内投与すると,投与から10分以内に対照として溶媒を投与したマウスに比べて有意な行動量の低下が観察された.更に,詳しく行動と脳波を観察すると,投与後10分以内に痙攣行動と痙攣脳波のいずれもが誘発されること,痙攣脳波は,断続的に4時間以上持続して起こることが判明した.一方,合成カンナビノイドのJWH-018を2.5 mg/kg の用量で腹腔内投与すると,Δ9-THCを投与したマウスと同様に行動量の抑制と痙攣がより投与から短時間に誘発されることが判明した. いずれのカンナビノイドも2種類のカンナビノイド受容体 (CB1,CB2) に対する親和性を有する.そこで,これらカンナビノイドによる痙攣誘発作用が,いずれの受容体を介した作用であるかどうかを薬理学的に検討した.CB1受容体選択的拮抗薬AM251をJWH-018投与の30分前に5 mg/kgの用量で腹腔内投与しておくと,行動量の抑制と痙攣の誘発が完全に消失することが判明した. 以上,Δ9-THCやJWH-018等のカンナビノイドは,CB1受容体を介してマウスに痙攣を誘発することを初めて発見した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小動物脳波・行動解析システムを用いて大麻由来カンナビノイドΔ9-THC或いは合成カンナビノイド (JWH-018) を投与したマウスの脳波と自発運動量の変化を調べた. Δ9-THCを10mg/kgの用量で,C57BL/6系雄性マウスに腹腔内投与すると,投与から10分以内に対照として溶媒を投与したマウスに比べて有意な行動量の低下が観察された.更に,詳しく行動と脳波を観察すると,投与後10分以内に痙攣行動と痙攣脳波のいずれもが誘発されること,痙攣脳波は,断続的に4時間以上持続して起こることが判明した.一方,合成カンナビノイドのJWH-018を2.5 mg/kg の用量で腹腔内投与すると,Δ9-THCを投与したマウスと同様に行動量の抑制と痙攣がより投与から短時間に誘発されることが判明した. いずれのカンナビノイドも2種類のカンナビノイド受容体 (CB1,CB2) に対する親和性を有する.そこで,これらカンナビノイドによる痙攣誘発作用が,いずれの受容体を介した作用であるかどうかを薬理学的に検討した.CB1受容体選択的拮抗薬AM251をJWH-018投与の30分前に5 mg/kgの用量で腹腔内投与しておくと,行動量の抑制と痙攣の誘発が完全に消失することが判明した. Δ9-THCやJWH-018等のカンナビノイドは,CB1受容体を介してマウスに痙攣を誘発することを初めて発見した.以上の点に関して成果があった,よって,達成度は「おおむね順調に進展している」とした.
|
今後の研究の推進方策 |
今回見られたΔ9-THC及びJWH-018によるCB1受容体を介したマウスへの痙攣誘発作用が容量依存的に起こるかどうかを検討する.さらに,カンナビノイドの関与が推定される睡眠調節因子(L-PGDS或いはA2A-R)の選択的阻害薬及びカンナビノイドの単独または併用投与による各マウスの行動量及び脳波に及ぼす作用を検討し,比較する.次に,睡眠覚醒障害モデル動物(L-PGDSやA2A-R CB1-RのKOマウス等)及びCB1-RのKOマウスを用いて,カンナビノイド及び選択的CB-R阻害薬の単独または併用投与による各マウスの行動量及び脳波に及ぼす作用を検討する.また,通常の脳波解析と共に,各測定脳波について多変量解析を行い,様々な脳波パターン(ノンレム睡眠,レム睡眠,覚醒,痙攣他)の細分類化を行う.次に,多変量解析データを活用して,各脳波パターンを識別する脳波解析アルゴリズムを作製し,睡眠覚醒等の各ステージの変動を調べる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に行ったマウス脳波等測定の実験費用が予定額以下で済んだため.
|
次年度使用額の使用計画 |
基本的には平成28年度と同様の使用を計画している.通常汎用される試薬,脳波および自発運動量測定用の器具等の費用に加えて,遺伝子欠損マウスの繁殖飼育費用として使用する予定である.また,研究代表者と分担者の研究打ち合わせ等や,研究成果発表のための学会参加の出張費,さらに論文投稿料,印刷代等の費用として使用する予定である.
|