研究課題
敗血症は、細菌による感染を発端として、細菌が産生するエンドトキシンなどの毒素が全身に広がり、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全、ショックなどを引き起こす全身疾患である。重症度に幅があり敗血症、重症敗血症、敗血症性ショックの順で重篤化し、まだ有効な治療法が確立していない。申請者らは敗血症性ショックモデルマウスに神経ペプチドであるオレキシンを末梢投与すると、オレキシンが全身性炎症状態で障害を受けた血液脳関門を通過し、中枢に作用してバイタルサイン(体温と心拍数)を回復することを見出した。神経活動の指標であるFosを用いた免疫組織学的手法による探索の結果、このオレキシンによる体温の回復作用には延髄縫線核セロトニン神経が活性化されることが重要であることがわかった(Ogawa, Irukayama-Tomobe, eLife, 2016)。さらに延髄縫線核にアデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターを用いて抑制性(hM4Di)DREADD(Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs) を発現させた場合に、オレキシンの体温上昇作用が消失することを確認した。さらに、ePET1-Creマウスとfloxed-hM3Dqマウスを交配し、ダブルトランスジェニックマウスを作成した。このマウスに敗血症性ショックを起こした後、CNO投与によりセロトニンニューロンを興奮させた結果、低下した体温の上昇が確認された。また、オレキシンの生存率の改善効果に伴いカテコールアミンとコルチコステロンが増加し、炎症性サイトカインが減少することを見出した。このことからオレキシンの生存率改善には抗炎症作用も関連しているのではないかと考えられた。
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BRAIN and NERVE
巻: 70 ページ: 1255 ~63