研究課題/領域番号 |
16K08549
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
石澤 有紀 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 助教 (40610192)
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研究分担者 |
池田 康将 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 准教授 (60432754)
今西 正樹 徳島大学, 病院, 助教 (00734344)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 血管内皮細胞 / 動脈硬化性疾患 / 一酸化窒素合成酵素 / スタチン / ERK5 / 内皮間葉転換 |
研究実績の概要 |
当研究課題では、動脈硬化性疾患におけるERK5の関与とERK5を介したエピゲノム修飾の関与を明らかにすることを目的としている。内皮間葉転換(EndMT)では内皮細胞マーカー分子の発現が低下し、通常はエピゲノム修飾等によって発現が抑制されている間葉系細胞マーカー蛋白の発現が上昇し、心血管疾患を誘導している可能性が示唆されている。我々の予備実験において、一酸化窒素(NO)合成酵素(NOS)阻害剤であるL-NAMEを投与することによって内皮障害を惹起したマウスにおいて、大動脈血管内膜における内皮細胞マーカーであるVE-カドヘリン蛋白発現の低下が観察されている。今回、培養ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いた検討から、NO供与体の添加によりVE-カドヘリンの発現が上昇し、逆にNO消去剤で減少することを見出した。このことから、NO産生が内皮マーカーであるVE-カドヘリン発現、すなわちEndMT誘導に関与する可能性が示唆された。申請者らはこれまでにピタバスタチンが血管内皮細胞においてERK5の活性化を介してeNOSの発現を増加させることを報告しているが、同様にVE-カドヘリン発現も増加させ得ることが観察された。ピタバスタチンはマウスにおいてL-NAMEによって惹起された血管障害を改善するが、これにはERK5の活性化を介したEndMTの抑制が関与することが示唆された。さらに申請者らは、玉ねぎなどに豊富に含まれるポリフェノールの一種であるケルセチン誘導体がHUVECにおいてERK5を活性化することを明らかにした。ケルセチンもピタバスタチンと同様にマウスにおいて血管保護効果を示した。そこで現在はERK5内皮特異的欠損マウスに対するL-NAME投与とピタバスタチンあるいはケルセチンの効果について解析を行なっているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ野生型マウス及び培養細胞を用いて検討を行ってきた。内皮障害を伴う動脈硬化性疾患モデルマウスにおいてEndMTが誘導されている可能性を見出し、ピタバスタチンあるいはケルセチンといったERK5を活性化させる薬物が内皮細胞マーカーの発現増加を介してマウスの血管障害を改善する可能性が示された。さらなる検討に向けて現在内皮細胞特異的ERK5欠損マウスの作成が完了しつつあり、今後は当マウスを用いて検討を行う予定である。また、これらの薬剤や食品由来因子がエピゲノム修飾に変化をきたすか否かを検討するため、HUVECゲノムDNAのメチル化パターン解析を試みている。動物実験と培養細胞を用いたin vitroの検討を並行して進めていることから、概ね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに野生型マウスで観察された内皮細胞マーカーの発現低下が、ERK5内皮特異的欠損マウスで見られるか否かを検討する。さらに、ピタバスタチン、ケルセチンなどの投与によって見られたL-NAME誘導性の心血管障害の改善が、ERK5欠損マウスにおいてキャンセルされるか否かについて検討する。ERK5欠損下で効果が消失すれば、内皮細胞におけるERK5の活性化が、ピタバスタチンやケルセチンによる血管保護効果、またはEndMT抑制に関与することが示される。また、エピゲノム修飾関連蛋白の活性化及び発現を、野生型マウス、遺伝子改変マウスの大動脈を用いて検討する。大動脈組織全体から抽出された蛋白やmRNAには内皮細胞のみならず血管平滑筋や線維芽細胞由来のものが混在し、内皮細胞特異的な変化を観察するのは非常に困難である。したがって、En face染色を行うことによって血管内腔から直接免疫染色を行い観察することによって、内膜での変化を捉えたいと試みている。 培養細胞を用いた検討では、引き続きDNAメチル化パターンに対するこれら薬剤の効果を次世代シークエンサーを用いて解析する。また、アセチル化酵素阻害剤を用いて薬理学的にEndMTにおけるエピゲノム就職の関与を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費が当初予定より該当金額分削減されたため、次年度使用額として繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度繰越分については、次年度「その他」の経費として英文校正費として使用する。
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