研究課題/領域番号 |
16K08550
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
土屋 浩一郎 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学系), 教授 (70301314)
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研究分担者 |
石澤 有紀 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 講師 (40610192)
池田 康将 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 准教授 (60432754)
宮本 理人 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学系), 助教 (60456887)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 亜硝酸塩 / 糖尿病 / AMPK |
研究実績の概要 |
空腹時血糖値の制御には、膵臓α細胞から分泌されるグルカゴンが引き起こす糖新生が重要な役割を果たしている。我々はこれまでに、亜硝酸塩を経口投与したラットの空腹時血糖値が低下することを示してきたが、その詳細なメカニズムは未だ不明である。そこで本研究では、亜硝酸塩による空腹時血糖値低下のメカニズムを解明することを目的として、亜硝酸塩による膵臓α細胞からのグルカゴン分泌と肝臓での糖新生に注目して検討を行った。 マウス膵臓α細胞由来のα-TC細胞において、亜硝酸塩の刺激によりグルカゴン分泌が減少することを見出していたが、続いて亜硝酸塩よるグルカゴン分泌減少のメカニズムを解明するため、本年度は糖脂質代謝における重要なエネルギーセンサーであるAMPK ( 5’AMP-activated protein kinase ) に注目して検討を行った。AICAR及びmetformin ( AMPK活性化剤 )の刺激によってグルカゴン分泌が減少することを明らかにした。また、亜硝酸塩の刺激によりAMPKのリン酸化の亢進を認めた。さらに、亜硝酸塩の刺激によるグルカゴン分泌の減少とAMPKのリン酸化の亢進はCompound C ( AMPK阻害剤 )により阻害された。一方、肝臓においてAMPKが活性化することにより糖新生のような同化作用は抑制されるため、ラット肝実質細胞由来のFao細胞においてもAMPKに注目して検討を行った。亜硝酸塩刺激によりAMPKのリン酸化の亢進が認められた。また、亜硝酸塩の刺激により糖新生が抑制され、この作用はCompound Cにより阻害されることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は、αーTC細胞からのグルカゴン分泌に対する亜硝酸塩の濃度依存性・時間依存性を検討し、亜硝酸塩によってグルカゴン分泌が抑制されること、また、その作用にAMPKが関与することを明らかにした。またFaO細胞にグルカゴンで刺激した時のグルコース分泌が亜硝酸塩で阻害される所までを明らかにしていた。 今年度はこれらの点を更に解明するため、α-TC細胞にAMPK刺激剤であるAICAR及びmetforminを添加し、グルカゴン分泌に与える影響を検討し、AMPKの関与を明確にした。 またFaO細胞における亜硝酸による糖新生もはAMPK阻害剤で抑制されることを明らかにし、亜硝酸塩による抗糖尿病効果における、細胞内メカニズムの解明をさらに進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、αTC細胞に対する亜硝酸塩の効果を検討してきたが、今後は亜硝酸塩による抗糖尿病効果について、早急に動物実験に着手し、これまでに解明した細胞内メカニズムのin vivoでの実証を行うことにしている。また、硝酸塩による膵臓α細胞の形態に与える影響についても検討したい。 さらには、膵臓以外の臓器に対する亜硝酸塩の効果についても展開を図り、亜硝酸塩の糖脂質代謝に対する生理作用に関する研究を発展させていきたい。 具体的には、脂肪細胞ではグルカゴンによってリパ-ゼが活性化し脂肪分解が促進され、遊離脂肪酸が放出されることから、脂肪細胞からの遊離脂肪酸放出に対する亜硝酸塩の影響についても検討していきたい。
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