研究課題/領域番号 |
16K08556
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
青山 晃治 帝京大学, 医学部, 教授 (00420943)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グルタチオン / microRNA / 神経変性疾患 / グルタミン酸トランスポーター |
研究実績の概要 |
Alzheimer病(AD)患者の脳内では、酸化ストレスの亢進と抗酸化物質であるグルタチオン(GSH)の減少が報告されており、神経細胞内のGSHを増加させることは神経保護に働くと考えられる。しかし、経静脈的もしくは腹腔内に投与されたGSHは血液脳関門を通過できないため有効な治療法とならない。本研究では、神経GSH産生を抑制するmicroRNA(miR-96-5p)に対し、そのinhibitor(miR-96-5p anti-miR)を経鼻投与することにより脳内GSH産生を促進し神経変性抑制効果を発揮するかどうかを明らかにすることが第一の目的である。 まず、経鼻投与によるanti-miRの中枢移行性を確認するために、蛍光標識されたmiR-96-5p anti-miRをC57BL6マウスの鼻腔内に投与する実験を行った。経鼻投与3日、5日、および7日後に採取した脳組織から海馬組織切片を作成し、miR-96-5p anti-miRの中枢移行性を共焦点蛍光顕微鏡下で確認したところ、投与3日後の海馬神経細胞層CA1~CA2にかけて蛍光が確認された。この結果から、経鼻投与によるanti-miRの中枢神経(海馬)への移行性が示唆された。さらに、miR-96-5p anti-miRの経鼻投与によって海馬GSH量が増加するかどうかについて、GSH蛍光標識である5-Chloromethylfluorescein diacetate (CMFDA)を用いて検討した。対照群として、生理食塩水およびscrambled anti-miRを同様に投与した。miR-96-5p anti-miR投与群においては、経鼻投与3日後に海馬神経細胞層CA1~CA2にかけてのCMFDA蛍光シグナルの増強が確認された。この結果から、miR-96-5p anti-miRの経鼻投与により海馬GSH量は増加すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海馬におけるanti-miRの効果発現を観察するにあたり、最適な投与後期間を確定するまでに時間を要した。また、本研究で用いているmiR-96-5p anti-miRおよびscrambled anti-miRの購入(海外発注)に時間を要することも影響している。
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今後の研究の推進方策 |
経鼻投与3日後の時点において、miR-96-5pにより制御を受けるアミノ酸トランスポーターEAAC1についてanti-miR投与後の海馬における発現量変化を検討する。また、アミロイドβ1-42 ADモデルマウスを用いて、miR-96-5p anti-miR経鼻投与による神経変性抑制効果がみとめられるかどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画全体にやや遅れが生じ、平成29年度計画に挙げていた実験の一部が未実施となったため。未実施の実験については次年度に移行する。
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