研究課題/領域番号 |
16K08559
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
杉山 篤 東邦大学, 医学部, 教授 (60242632)
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研究分担者 |
中村 裕二 東邦大学, 医学部, 助教 (10614894)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 拡張不全型心不全 / 収縮不全型心不全 / EP4受容体刺激 / ONO-AE1-329 / 左室圧容積関係 |
研究実績の概要 |
左室駆出率が保たれた拡張性心不全(heart failure with preserved ejection fraction: HFpEF)は全心不全患者の半数以上を占め、予後不良である。HFpEFに対して、収縮性心不全(heart failure with reduced ejection fraction: HFrEF)の治療において予後改善が認められた薬物(レニン・アンジオテンシン系抑制薬およびβ遮断薬など)の有用性が評価されたが、同様の効果は認められず左室拡張機能を修復できる薬物の開発が強く求められている。本年度の研究では、正常犬を用いて薬理学的EP4受容体刺激薬ONO-AE1-329の「左室等容性弛緩能」および「充満期拡張能」に対する作用をそれぞれ評価した。低用量のONO-AE1-329(0.3 ng/kg/min)を静脈内に10分間持続投与し、投与開始5,10,15,20および30分後に各指標を測定した。次に中用量のONO-AE1-329(1 ng/kg/min)を静脈内に10分間持続投与し同様に各指標を測定した。さらに高用量のONO-AE1-329(3 ng/kg/min)を静脈内に10分間持続投与し、同様に各指標を測定した。対照薬の測定時間は、ドパミン(3 micro-g/kg/min)およびドブタミン(1 micro-g/kg/min)に関しては投与開始10分後、ミルリノンに関しては5 micro-g/kg/minで10分間持続投与し、0.5 micro-g/kg/minに変更10分後とした。ONO-AE1-329には、既存の強心薬と同様の等容性収縮力および拡張力の増強作用に加えて、既存薬に認められない左室拡張末期容積の増加作用および左室収縮末期容積の減少作用が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正常犬を用いての実験は概ね順調に推移した。現時点で実験の遂行に支障をきたすような課題はない。
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今後の研究の推進方策 |
HFpEFモデル犬を用いて薬理学的EP4受容体刺激の「左室等容性弛緩能」および「充満期拡張能」に対する作用をそれぞれ評価する。さらにiPS細胞由来心筋シート、モーションベクトル法および薬理学的分析手法を用いてEP4受容体刺激の拡張能に対する作用および機序を解析する。HFpEFに対する薬物治療の突破口となる知見を期待できる。しかしHFpEFモデル犬では当初想定したような安定した病態を得られない場合も想定される。そのような際には、慢性房室ブロック犬やモルモットを用いて必要な情報を補填することで対応する。これらのモデル動物を用いて薬物の薬理作用を評価する技術は当研究室で既に確立されている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初出席を予定していた学会に参加しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
学会出張費用の一部として執行する。
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