研究課題
当初は腎ラップ法による左室駆出率が保たれた拡張性心不全(HFpEF)モデル犬を用いてONO-AE1-329の左室等容性弛緩能および充満期拡張能に対する作用を評価する予定であった。しかし事前に実施した調査において、モデル作成の成功の歩留まり率が20%未満であることが判明した。そこで、腎ラップ法の代替として慢性完全房室ブロック犬を慢性心不全モデルとして使用した。すなわち、ビーグル犬をチオペンタール(30 mg/kg)で麻酔し、カテーテルアブレーション法により完全房室ブロック誘発し、全身管理を4週間以上行い、良好な術後経過をたどった個体を今回の実験に用いた(n=4)。ペントバルビタール(30 mg/kg, i.v.)で全身麻酔を導入し、イソフルラン(1.5%)を吸入させることで麻酔を維持した。大腿動静脈にシースを挿入し、左室圧測定用カテーテルおよび右房/右室電極カテーテルをそれぞれ挿入した。左室圧モニター下で、刺激周期400 msで、右房、右室を150 msの時間差で順次電気ペーシングを行った。ONO-AE1-329投与前にコントロール値を2回測定した。これらの値が安定していることを確認後に低用量のONO-AE1-329(0.3 ng/kg/min)を静脈内に30分間持続投与し、投与開始10、20および30分後に各指標を測定した。次に高用量のONO-AE1-329(1 ng/kg/min)を静脈内に30分間持続投与し同様に各指標を測定した。前年度実施した正常犬で観察された陽性変力作用は慢性心不全モデルでも確認されたが、変弛緩作用には一定の傾向を確認できなかった。慢性心不全に起因する心筋リモデリングを有する心臓ではEP4受容体刺激による細胞内情報伝達系が正常心と変化している可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
腎ラップ法によるHFpEFモデル犬を用いてONO-AE1-329の左室等容性弛緩能および充満期拡張能に対する作用を評価する予定であった。しかし事前に実施した調査において、モデル作成の成功の歩留まり率が20%未満であることが判明した。そこで代替として慢性完全房室ブロック犬を慢性心不全モデルとして使用し、予定していた薬物評価を実施し、当初の到達目標を達成することができた。
慢性心不全に起因する心筋リモデリングを有する心臓ではEP4受容体刺激による細胞内情報伝達系が正常心とは異なっている可能性が判明した。来年度は、本年度得られた結果を詳細に分析するとともに、拡張能に対する改善作用を期待できる他の重要な作用点として筋小胞体Ca2+/ATPase(SERCA)があるので、SERCA機能改善薬による変力・変弛緩作用を評価し、その結果をEP4受容体刺激薬と比較する。HFpEFに対する薬物治療の新たな突破口となる知見を探索する。
当初出席を予定していた海外で開催された学会に参加しなかったため次年度使用額が発生した。次年度にSERCA機能改善薬による変力・変弛緩作用を評価するために必要な消耗品の一部に充当する予定である。
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