研究課題
我々は、非中枢性非神経性心臓コリン作動系 (a non-neuronal cardiac cholinergic system: NNCCS)という心臓のシステムを、世界に先駆けて発見し、これまでその新規生理学的機能について報告してきた。このNNCCSを機能的に亢進させたマウスとして、我々はACh合成酵素であるcholine acetyltransferase (ChAT)を心臓心室筋に特異的に、しかも生後発現させるトランスジェニックマウス(ChAT tg)を近年我々は作製した。このChAT tgを用いて、NNCCSを機能亢進させた場合の中枢神経系(CNS)への影響を解析した。心臓限局的と思われた表現型に加え、NNCCS機能亢進により、抗不安作用(夜間帯行動量の減少)、抗うつ作用(強制水泳試験・尾懸垂試験での無動時間の減少、高架式十字迷路でのオープンアーム滞在時間の増加)、抗ストレス作用(拘束ストレスによる血中corticosterone上昇抑制)、抗痙攣作用が、いずれも野生型マウスと比べて有意に認められた。このことは、NNCCSの亢進が心臓のみではなく、CNSへもその影響を及ぼしていることを示唆している。一方、ChAT tgは、野生型とくらべても、血行動態(収縮期・拡張期血圧、心拍数)および心機能(カテーテル検査による各種心機能パラメーター評価による)いずれもまったく有意差を認めなかった。さらにChAT tgのChAT陽性神経細胞数も、野生型とくらべても差異はなかった。以上より、本表現型は、NNCCS亢進効果からの影響と考えられた。今後、この心臓からCNSへのNNCCSによる影響を及ぼす経路およびその責任因子(または分子)について検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
予定していたよりも、多種多様な表現型が認められ、その一つ一つを解析するのにやや時間はかかってはいるものの、今のところ順調に進行していると考えている。
現在、CNSへの影響と思われる各種表現型を惹起する経路とその責任因子について検討中である。多種多様な表現型が実は一つの経路を介して起こっているであろうという仮説のもとに、追加の実験を行っている。今後は、その経路を遮断することで、特異的な表現型が認められなくなるのか、また、その経路に関連する情報伝達系に対する阻害剤が、同様に、表現型の出現を抑制するのかについて検討する予定である。また、CNSの表現型をよりわかりやすく捉えるために、ブレインイメージングにてビジュアライズするための評価方法を検討する。
順調に研究計画は進んだおかげで、15万円ほどの残が生じた。これは、他の研究助成金の使用も当該年度にあったため、そちらも使用していたためである。
次年度に繰越した分は主に、実験動物用の床敷および餌代として残なく使用する予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件)
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