研究課題/領域番号 |
16K08562
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
伊井 正明 大阪医科大学, 実験動物部門, 講師 (10442922)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | DDS / 間葉系幹細胞 / 心筋再生 / スタチン |
研究実績の概要 |
生体吸収性ポリマーであるPLGAは、加水分解時間の短い架橋率50:50及び長い架橋率85:15の2種類に対して、シンバスタチンをPLGAとの重量比10%でナノ粒子作製を行ったところ、封入率が85:15PLGAの方が低かったため、50:50PLGAをその後の実験に使うことにした。なお、ナノ粒子作製では、用いる有機溶媒の種類をジクロロメタン→アセトンに変更することや粒子回収時の凍結乾燥にPBSの量を増やすなど工夫をすることによって粒子径:300±50nm程度で分散性のよいナノ粒子の作製に成功した。 次に、上記のシンバスタチン封入PLGAナノ粒子をヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(human adipose-derived stem cell: hAdSC)に0, 25, 50, 100ug/5x10^5個hAdSCの割合で抱合させ、各種細胞機能評価を行った。細胞増殖能に関しては、25, 50ugの量では不変であったが100ugの量では有意に低下した。一方、細胞遊走能に関しては、50ugの量で最も昨日更新が認められた。また、定量的RT-PCRによる遺伝子発現解析においても50ugの量を作用させたときにVEGF, FGF2, HGFなどの血管新生促進因子や生存因子IGF1の発現が高い結果がえられた。さらに、内皮細胞・平滑筋細胞への分化能について特異的抗体(CD31, Calponin)を用いた免疫細胞染色法によって評価したところ、いずれの細胞系にも50ug量のシンバスタチン封入PLGAナノ粒子を取り込ませた状態で高い分化能を示した。以上の結果から、50ug/5x10^4個hAdSCの割合で作製したシンバスタチン封入PLGAナノ粒子抱合hAdSCが最も機能増強された細胞複合体であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度では、主としてin vitroの実験において、①シンバスタチン封入PLGAナノ粒子の最適化、②hAdSCに①の粒子を抱合させた場合の細胞機能評価を行い、最適な粒子抱合条件を見いだすことが可能であった。研究の進捗状況としては当初の計画通りであり、特に今後の研究推進のために問題点なども現状では抱えていない。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度には、今年度の研究成果を元にして、in vivoの実験に移行していく予定である。比較検討群として、ヌードマウスの冠動脈前下降枝を結紮することによって心筋梗塞を人為的に誘発し、3日後(ヒトの臨床では、約7-10日後に相当)にhAdSCをDiIなどの蛍光色素でラベルした10^4, 5x10^4, 10^5, 5x10^5/匹の異なる数を投与し、梗塞心筋に細胞が集積素最小数を見極める予定である。 次に、最小投与細胞数を決定した後に、①PBS投与群、②薬剤非封入PLGAナノ粒子抱合hAdSC投与群、③シンバスタチン封入PLGAナノ粒子投与群、④シンバスタチン封入PLGAナノ粒子抱合hAdSC投与群に分けて実験を行う計画を立てている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、実験の失敗分も想定して消耗品の予算計上を行っていたが、実験の準備を綿密に行ったため予想外に研究成果が順調に進んだ。このため、必要となる物品が節約でき、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、in vivoの実験も開始する予定であり、高価な実験動物(ヌードマウス)に対して侵襲の高い心筋梗塞誘発手術を多数行うため、予想外のマウス代金の出費に備えて今年度から繰り越しした研究費を使用できるようにしておく。
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