研究課題
内臓脂肪型肥満を基盤とするメタボリックシンドロームは、虚血性疾患のリスクが重複することにより、心血管病や糖尿病の発症リスクが相乗的に増加する病態である。虚血性疾患を発症する要因に、血管内皮細胞の機能低下による血管抵抗性の亢進がある。最近、血管周囲に蓄積した脂肪、すなわち、血管周囲脂肪組織(PVAT)が血管抵抗性調節に寄与していることが明らかになりつつある。我々はこれまでに、メタボリックシンドロームモデルSHRSP.ZFラットの腸間膜動脈PVATは血管弛緩増強効果をもつこと、この補足的な機能はメタボリックシンドローム後期に消失することを見出している。しかし、PVATの血管緊張性調節に関わる因子とその作用機序、PVAT補足効果の発現または消失に関与する因子、PVATの機能破綻は組織・臓器の機能破綻を誘発するかについては未だ不明である。そこで本研究では、上記の点に着目して検討し、以下のことを明らかにした。SHRSP.ZFラット腸間膜動脈PVATは、1)拡散性の血管弛緩因子を産生しており、その産生は加齢に伴い減弱すること(H28年度)、2)PVATによる動脈拡張増強効果の発現は酸化ストレスが高い場合に惹起されること、PVAT効果の発現にはおそらくAT1受容体が関与していること(H29年度)、3)PVATはapelinを産生・放出し、血管内皮細胞NO産生を高めることにより動脈拡張作用を生じること、さらに、PVAT効果の消失は臓器機能障害を引き起こす可能性があること(H30年度)を見出した。以上の研究成果は、PVAT機能の破綻防止がメタボリックシンドロームに伴う虚血性疾患発症予防に対する一戦略となることを示している。
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SHR等疾患モデル共同研究会News Letter,
巻: 60 ページ: 1-2
International Journal of Molecular Sciences
巻: 20 ページ: 106
10.3390/ijms200101060
http://plaza.umin.ac.jp/~dmcra/newsletter/img/NewsLetter_No_060.pdf