本研究は慢性腎臓病の進行に深く関与しているミネラロコルチコイド受容体(MR)の活性が、レニンアンギオテンシン系によるものだけでなく、AGE-RAGE系の活性からも誘導されることを証明することを主目的としていた。RAGEKOマウスにDOCAおよび高食塩を負荷しても、野生型で誘導されるMRの活性化が著明に低下していること、MR下流分子であるSGK1(serum-glucose kinase1)がRAGEKOマウスにおいて抑制されていることから、AGE-RAGE系の活性がMR活性化そのものに「血圧とは独立して」関与していることを示すことができた。現代日本において西洋化した食生活は生体へのAGE負荷が増加するとともに、肥満自体がRAGEの発現を上昇させることも報告されている。そのようなAGE-RAGE系の活性亢進が知らず知らずの内に我々の生体内で誘導され、結果としてMR活性化を介し慢性腎臓病の進展を助長していると考えられる。実際に、原発性アルドステロン症患者の末梢血単核球のMR mRNAレベルは、RAGEの主たるリガンドであるHMGB1 mRNAレベルときれいな正相関の関係性を有していることを我々は見出しており、MR活性とAGE-RAGE系の強い関係性が示唆される。このようにMRとAGE-RAGE系が生体内でVicious cycleを形成し一方のみを抑制する治療では不十分で、両者をうまく抑制することが慢性腎臓病の進行抑制に重要であると考える。 さらに、我々は共同開発に参加した次世代分子標的薬であるRAGEアプタマーが、増加の一途を辿っている高血圧性腎障害の新たな治療戦略として考慮するに値するかを検討した。その結果、RAGEアプタマーはMR活性化腎障害を有意に抑制することに成功し、今後の臨床応用への足がかりとなる結果を出すことができた。
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