研究課題/領域番号 |
16K08565
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
喜多 紗斗美 福岡大学, 医学部, 准教授 (10461500)
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研究分担者 |
奥田 裕子 京都大学, 医学研究科, 特定研究員 (30709663) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イオン輸送体 / ミトコンドリア / 血管病 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアはATPの産生部位であるとともに、細胞質Ca2+の貯蔵場所でもある。最近申請者は、ミトコンドリア内膜Na+/Ca2+交換体(NCLX)の遺伝子欠損マウスを開発したところ、低濃度のアゴニストによる血管収縮反応が特徴的に抑制されることを見出した。ミトコンドリアのCa2+貯蔵機能は高濃度Ca2+に対して寄与すると考えられているので、この特性は予想外であった。本研究では、各種ミトコンドリアCa2+輸送体遺伝子改変マウスおよびオルガネラ・細胞質局在2色蛍光Ca2+センサーを駆使した実験により、この生理的Ca2+濃度域の血管機能調節におけるミトコンドリアCa2+輸送体の分子制御機構を解明することを目的としている。さらに、各種病態モデル実験により、ミトコンドリアCa2+輸送異常が関わる血管病発症機序の解明およびその創薬応用を目指している。平成28年度は、ミトコンドリアCa2+輸送体遺伝子改変マウスの血管機能や形態について解析を行い、低濃度のアゴニストによる血管収縮反応がNCLX欠損マウスでは減弱していたのに対し、MCU欠損マウスでは野生型マウスとほとんど同じであるという結果を得た。現在、ERあるいはミトコンドリアの局所Ca2+を測定する目的で、蛍光Ca2+センサーを血管平滑筋特異的に遺伝子導入した可視化マウスを作出中である。今後、ミトコンドリアCa2+輸送体遺伝子改変マウスとの相互交配を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、各種ミトコンドリアCa2+輸送体遺伝子改変マウスの血管機能および形態について野生型マウスと比較することを計画していた。これまでに、NCLX欠損マウスではアゴニストに対する血管収縮反応が減弱していたのに対し、MCU欠損マウスでは野生型マウスでの反応とほとんど変わらないという結果を得ている。さらに、蛍光Ca2+センサーを血管平滑筋特異的に遺伝子導入した可視化マウスの作製も計画していたが、予定通りに蛍光Ca2+センサー導入マウスを作製できている。現在、これらの蛍光Ca2+センサー導入マウスとミトコンドリアCa2+輸送体遺伝子改変マウスを相互交配し、2色蛍光Ca2+センサー導入MCU/NCLX遺伝子改変マウスを作製中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、現在作製中の2色蛍光Ca2+センサー導入MCU/NCLX遺伝子改変マウスを用いて、血管標本や初代培養血管平滑筋細胞を作製し、各種アゴニスト・Ca2+動員薬刺激下におけるミトコンドリアへのCa2+取り込み・汲み出し機能や、ミトコンドリア-筋小胞体-細胞質間の動的Ca2+シグナルを蛍光イメージング解析する。また、これら遺伝子改変マウスを用いて、各種血管病モデルを作製し、各病態モデルの血管機能や形態、ミトコンドリアCa2+輸送を解析することにより、ミトコンドリアCa2+輸送体の機能破綻と血管機能障害の関連について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は学会発表を行わなかったため、旅費の支出が無く、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度より所属研究機関が変更になり、本研究を継続するためにマウス血流解析装置を購入する必要がある。平成29年度分と合わせた助成金を使って、本装置を購入する予定である。
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