研究課題/領域番号 |
16K08566
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
道具 伸也 福岡大学, 薬学部, 准教授 (60399186)
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研究分担者 |
高田 芙友子 福岡大学, 薬学部, 助教 (70412575)
山内 淳史 福岡大学, 薬学部, 准教授 (90341453)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳ペリサイト / αシヌクレイン / 神経細胞 / 血液脳関門 / パーキンソン病 / 6-hydroxydopamine |
研究実績の概要 |
パーキンソン病患者の大部分を占める孤発性パーキンソン病の原因は不明であるが、その病態責任分子は脳内に広く認められるLewy小体の構成成分であるαシヌクレインである考えられている。本研究では、脳内αシヌクレイン増加によってもたらされる脳ペリサイトの病変化(機能低下)が血液脳関門機能およびドパミン神経機能を低下させる可能性を明らかにすることを目的とする。 本年度は(1)正常脳ペリサイトの機能として、代表的なドパミン作動性神経毒6-hydroxydopamine (6-OHDA)によるドパミン神経細胞傷害を脳ペリサイトが保護しうるか、また、(2)αシヌクレインによる血液脳関門機能障害における脳ペリサイトの役割を検討した。 (1)脳ペリサイトによる6-OHDA誘発性神経細胞傷害の抑制:ドパミン神経細胞モデルとしてSH-SY5Yを用いた。脳ペリサイト存在下では6-OHDAによるSH-SY5Y細胞傷害が抑制された。この作用は脳ペリサイト培養上清においても認められ、脳ペリサイトが恒常的に神経細胞保護因子を放出していることが示唆された。また、脳ペリサイトは抗酸化ストレス応答経路であるNrf2/Keap1/HO-1非依存的に、6-OHDAによるアポトーシス実行因子caspase-3の活性化を抑制することがわかった。 (2)αシヌクレインによる血液脳関門機能障害における脳ペリサイトの役割:脳血管内皮細胞と脳ペリサイトを共培養したin vitro血液脳関門モデルを作成して、αシヌクレインの血液脳関門に対する作用を検討した。αシヌクレインで脳ペリサイトを刺激すると、血液脳関門のバリア機能が低下した。脳血管内皮細胞と異なり、脳ペリサイトはαシヌクレインに応答して血液脳関門機能障害因子である炎症性サイトカインやMMP-9を産生し、これらが関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は正常時での脳ペリサイトのドパミン神経細胞に対する機能として、ドパミン神経細胞保護作用があること、および、αシヌクレインによる脳ペリサイトの病変化の一端として、血液脳関門機能障害に関与する炎症性サイトカイン産生が増加することを明らかにできた。神経細胞に対しては、本来の目的であるαシヌクレインによる神経細胞傷害を検討できていないものの、脳ペリサイト病変化がパーキンソン病患者で認められる病理所見である神経細胞の変性・脱落および血液脳関門破綻に関与しうることを示唆する基礎的な実験証拠を得ることができた点で、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
αシヌクレインによる脳ペリサイト機能異常がドパミン神経細胞機能におよぼす影響とその機序について、脳ペリサイトによるαシヌクレインの細胞内取り込みの観点から明らかにする。 また、脳ペリサイトが脳内αシヌクレインの作用標的であることが明らかにできたので、血中αシヌクレインの脳内移行を端緒とする末梢由来αシヌクレインの脳内増加が脳ペリサイトの病変化を惹き起こす可能性が示唆される。これを明らかにするため、末梢由来αシヌクレインの血液脳関門透過機序を明らかにする。
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