研究課題
現在、満足できる疼痛コントロールができているがん患者は少なく、より効果的な鎮痛薬の開発が求められている。近年、two-pore domain background K+ channel のひとつであるTREK1が、痛みのセンサーtransient receptor potential (TRP) channel および鎮痛制御に寄与するオピオイド受容体(opioid receptor; OR)を発現する神経の両者に存在し、疼痛経路と鎮痛経路の両方に作用する「Dual modulator」として鎮痛シグナルを制御することが示唆された。しかしながら、がん性疼痛におけるTRP発現神経ならびにOR発現神経のTREK1の役割については不明な点が多い。そこで、申請者はがん性疼痛におけるTREK1の役割を解析するとともに新規TREK1活性化剤の開発を目指した。当該年度は、一昨年度および昨年度に実験を行ったOR発現human embryonic kidney 293 (HEK293細胞) cellsを用いてのオピオイド製剤をはじめとする既存の鎮痛薬の評価を進め、結果をまとめて学会発表を行った。さらに、TREK1発現HEK293細胞、ならびにTREK1/MOR共発現HEK293細胞を作製し、TREK1の活性を評価するアッセイを確立した。現在、これらの細胞を用いてオピオイド製剤によるTREK1活性評価、ならびにTREK1 agonistの化合物スクリーニングを行っているところである。さらに坐骨神経部分結紮モデルラットを作製し、脊髄後根神経節細胞および脊髄における疼痛の進展にTREK1発現変化等についても解析を行っているところである。
3: やや遅れている
昨年度は産休・育休を取得していたため、従来のスケジュールに合わせた研究遂行が困難であった。OR発現HEK293細胞を用いたオピオイド製剤をはじめとする既存の鎮痛薬の評価およびその学会発表は終了し、現在論文投稿中である。また、TREK1およびMOR/TREK1共発現細胞の作製までは行ったが、各種オピオイド製剤のTREK1活性およびTREK1 agonistの化合物スクリーニングについては現在その評価が進行中である。坐骨神経部分結紮モデルラットを用いた神経障害性疼痛におけるTREK1の役割を解明する実験についても併せて現在評価中である。そのため、計画通りに実験が進んでいるとは言い難く、当該年度の研究計画目標は達成できておらず、研究はやや遅れている。
平成31年度以降は、OR発現HEK293細胞を用いたオピオイド製剤をはじめとする既存の鎮痛薬の評価に関する論文をアクセプトさせる。また、TREK1およびMOR/TREK1共発現細胞を用いた各種オピオイド製剤のTREK1活性およびTREK1 agonistの化合物スクリーニングを完了させる。さらに、坐骨神経部分結紮モデルラットを用いた神経障害性疼痛におけるTREK1の役割を解明する実験を行い、スクリーンングよりヒットしたTREK1 agonistの鎮痛作用を評価する。
理由:平成30年度はMOR/TREK1共発現細胞の作製に時間を有したため、TREK1およびMOR/TREK1共発現細胞を用いた各種オピオイド製剤のTREK1活性およびTREK1 agonistの化合物スクリーニングを平成31年度に移行させた。そのため、平成31年度はCellKey assayならびにIonFlux assayなどを用いたスクーリング解析ならびに当初計画していた動物実験の両方を並行して進めていく予定である。使用計画:平成31年度は、直接経費の繰り越し分を以下の予算にて研究を遂行する;物品費:1,488,159円、その他:300,000円。平成31年度の研究費は主に上述した研究推進方策を進めるために必要な消耗品や実験動物などの購入(物品費)、英文校正・論文投稿費(その他費)に充当する予定である。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
J Pharmacol Sci
巻: 137 ページ: 67-75
10.1016/j.jphs.2018.04.002.