これまでの報告から、T細胞の活性化は細胞表面上に発現されるT細胞受容体架橋により誘導される。その刺激情報はT細胞受容体架橋の後、その直下に位置する CD3タンパク質の集簇、更にZAP70タンパク質のリン酸化レベルの上昇を介してより下流のタンパク質情報伝達系に伝えられることが明らかとされている。本年度 においては、上記のT細胞受容体刺激による細胞内情報伝達系におけるDR6刺激の作用点を明らかとする検討を行った。具体的にこれまでに作成したDR6遺伝子欠 損DO11.10T細胞ハイブリドーマ株にDR6野生型を恒常的に発現させたDO11.10-DR6WTおよびDR6の細胞内領域を全欠損させた変異体を恒常的に発現させたDO11.10- DR6_dT細胞株について、それぞれをCD3タンパク質の集簇を促す抗CD3抗体および抗DR6抗体による各種コンビネーションにより刺激した。ZAP70のリン酸化レベル の上昇が認められるとされる刺激5分後に各種細胞を回収し、各刺激条件下におけるZAP70タンパク質リン酸化レベルを、抗リン酸化ZAP70抗体を用いた Flowcytometry法により検出した。DO11.10-DR6_dT細胞株およびDO11.10-DR6WT細胞株ともに、未刺激条件下に比較して抗CD3抗体単独刺激条件においてZAP70リン 酸化レベルの上昇が検出された。また、抗CD3抗体と抗DR6抗体の共刺激条件において、DO11.10-DR6_dT細胞株では抗CD3抗体単独刺激条件下と同様にZAP70リン酸 化レベルの上昇が誘導されていたのに対し、DO11.10-DR6WT細胞株においては、ZAP70リン酸化レベルの上昇はより低値であった。上記の結果から、T細胞受容体 刺激による細胞内情報伝達系におけるDR6刺激の作用はT細胞受容体直下より作用する可能性が示唆された。
|