研究課題
RalはRasファミリーの低分子量GTP結合タンパク質であり、細胞の増殖、生存、遊走、浸潤など様々な機能を制御している。近年の多くの知見はRalの恒常的な活性化が、細胞のがん化、がんの浸潤・転移に重要であることを示している。研究代表者はRalの不活性化因子Ral GTPase-activating protein (RalGAP)を分子同定し、細胞、マウスを用いて解析してきた。本研究では口腔扁平上皮がん、膵臓がんにおけるRalGAPの役割を解析した。口腔がん細胞においてRalGAPβをノックダウンすると、Ralの活性が上昇し、細胞遊走と浸潤を促進した。口腔がん検体を用いた解析では、RalGAPα2の発現が正常組織と比較してがん組織で低下していた。口腔扁平上皮がん患者のうちRalGAPα2の発現が低い群は生存率の悪化を示した。口腔がん細胞を用いたRalGAPα2遺伝子のDNAメチル化およびヒストン修飾の解析により、DNAメチル化、ヒストンH4Ac、H3K27me間のクロストークがRalGAPα2の転写抑制に関与することが示唆された。膵臓がん細胞を用いた細胞でもRalGAP遺伝子のノックアウトは細胞遊走と浸潤を促進した。現在、膵臓がんマウスモデルを用いてRalGAPの発現喪失によるRalの恒常的活性化が浸潤・転移に与える影響を解析している。また、Ralの下流因子として新しい結合タンパク質を同定し、そのがん化における役割を今後明らかにする計画である。
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