研究課題/領域番号 |
16K08576
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
大日方 英 群馬大学, 未来先端研究機構, 准教授 (50332557)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生理活性脂質 / スフィンゴシン1リン酸 / アポリポタンパク質 / タンパク質精製 / 質量分析 |
研究実績の概要 |
スフィンゴシン1-リン酸(S1P)は血液中を循環する生理活性脂質であり、正常な血管機能の維持に重要な役割を果たす。S1Pは血液中では高密度リポタンパク上のアポリポタンパクMまたは血清アルブミンに結合して循環しているが、申請者のこれまでの研究から、血液中にはこれらのタンパク質とは別のS1P担体分子が存在する可能性が明らかになってきた。本研究課題では、アポリポタンパクMと血清アルブミンの両者を欠損させたマウスから調製した血漿を出発材料として、第三のS1P担体分子を分離精製し、機能的な役割に関して、アポリポタンパクMおよび血清アルブミンと比較検討を行うことを目的として研究を行っている。 平成28年度は、研究計画にしたがってアポリポタンパクMと血清アルブミンの両者を欠損させたマウスから調製した血漿を出発材料とし、第三のS1P担体分子を分離精製することに取り組んだ。質量分析計を用いたS1P含量測定を指標としてゲルろ過法およびイオン交換法によりマウス血漿の分画を進めた結果、比較的精製の進んだ画分にS1P結合活性が見出された。この画分を電気泳動により分離し、ゲル内トリプシン消化後、質量分析計を用いて含有されるペプチド分析を行ったところ、十数種のタンパク質を同定することができた。これまでの情報から、このうちの数個のタンパク質はS1P結合タンパク質として機能する可能性が高いと考えらえた。 そこで、平成29年度は、これらの候補タンパク質のS1P結合活性を確認すべく、リコンビナントタンパク質の大量発現系とS1P結合活性測定の系を確立した。5つの候補タンパク質についてリコンビナントのタンパク質を大量調製し、S1Pとの結合活性を検討したところ、1つの候補タンパク質においてアルブミンを上回る結合活性が確認され、第三のS1P担体分子として有力な候補であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、平成28年度中に血漿タンパク質の分離精製を進めてS1P結合活性を持つ候補タンパク質を同定し、平成29年度はリコンビナントタンパク質の発現系によるS1P結合能の確認実験や培養細胞を用いた機能評価に取りかかる予定であった。これまでのところ、おおむね研究計画の通り順調に計画が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでおおむね当初の計画通り順調に研究が進捗しているので、今後も申請した研究計画にのっとって研究を推進していく。平成30年度は、平成29年度に引き続き候補タンパク質のS1P結合能やS1P受容体活性化能などをin vitroおよび細胞を用いたアッセイ系により確認していく予定である。
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