研究課題/領域番号 |
16K08577
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
北川 元生 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (40262026)
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研究分担者 |
増田 渉 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (00623464)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Notch / TM2D3 / almondex |
研究実績の概要 |
前年度作製したTm2d3のexon 5を欠失するマウス(ノックアウトマウス)を交配し系統を樹立した。ヘテロ接合体の交配によって得られた胎生9.5-14.5日(器官形成期)胚を検索したところ、ホモ接合体は卵黄嚢血管が低形成であり、胎仔本体においては全身のうっ血と出血、さらに浮腫を示すことを見いだした。これらの表現型は、Jagged1等Notchシグナル系のいくつかのノックアウトマウスで報告されているものと類似している。またこの時期のマウス胎仔についてTm2d3プローブによるwhole mount in situ hybridizationをおこない、この遺伝子がubiquitousに発現し組織特異的な発現パターンを示さないことを見いだした。 海外からの入手を断念した抗活性化型Notch2抗体を用いた解析にかえて、luciferase assayをもちいてNotch2のTM2D3発現による活性化を検討したところ、Notch2はNotch1と異なりTM2D3発現による活性化がみられなかった。また免疫沈降法によって、Notch2はNotch1と異なりTM2D3とは物理的に会合しないことも見いだした。これらの結果はTM2D3の機能がNotchの分子種特異的であることを示唆している。 これらのTM2D3の機能の培養細胞を用いた解析、およびショウジョウバエalmondex欠失体の解析結果を論文にまとめ投稿した。現在査読者から要求された追加実験をおこなっている。要求のひとつにTM2D3の機能を欠失した細胞を用いた解析がある。そこで上記のノックアウトマウス胎仔から線維芽細胞を初代培養し解析に供している。その結果ノックアウトマウス由来の細胞では、細胞表面におけるNotch1の発現が低下していることを示唆する結果が得られてきているが、これは当該論文の結論を補強するものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Tm2d3遺伝子のノックアウトマウスの解析を開始し、Notchシグナル系に欠失が生じていることを示唆する表現型を見いだしている。 前年度までにおこなったTM2D3機能の培養細胞を用いた解析、およびショウジョウバエalmondex欠失体の解析結果を本年度追加でおこなった実験結果とあわせ論文にまとめ投稿した。査読者から要求された追加実験が予想以上に多岐にわたったため、その後はこれらを最優先で行った。
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今後の研究の推進方策 |
現在投稿・改訂中の論文の受理を目指し、今後も追加実験を最優先でおこなう。そのうちもっともchallengingであると考えられるTM2D3の機能欠失細胞における解析に見通しが立ちつつあり、結論を補強する形で改訂論文を再投稿できることが期待される。 Tm2d3ノックアウトマウスは、Rbp-jやPofut1などのNotchシグナルが完全に欠失すると考えられるノックアウトマウスにみられる心ループの低形成や体節の形成不全は観察されず、Tm2d3はNotchシグナルのすべてを担っているわけではないことが示唆されている。今後表現型の解析を継続し、論文投稿を目指す。また上記のこのマウスの表現型はTM2D1、TM2D2といったTM2D3と類似した構造をもつタンパク質もまたNotchシグナルに関与することを示唆している。これらのNotchとの機能連関を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿・改訂中の論文がまだ受理されておらす、次年度この掲載料が発生すると予想されるのでこれに使用する。また本年度おこなわなかったTm2d1、Tm2d2のノックアウトマウスを次年度作製する可能性が大きく、これに使用する。さらに研究代表者は本年度新設の国際医療福祉大学医学部に異動したが、現在実験室の設置作業中であり、マウスの運搬等新たな研究体制を整えるために使用する。
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