研究課題
我々はDNA複製前複合体に必須のヒストンアセチルトランスフェラーゼHBO1がヌクレオチド除去修復に関与し、この機構を推進する酵素であることを報告した。(Niida et al. Nature Communications, 2017).この研究の中で細胞周期G1期においてHBO1はヌクレオチド除去修復依存的に活性化されたATRによりリン酸化され、DDB2と結合してヌクレオチド除去修復を促進するために損傷部位周辺のヒストンをアセチル化することを明らかにした。またS期においてDNA複製マシナリーに共局在し活性化しているATRによりリン酸化されたHBO1がS期のヌクレオチド除去修復を促進していることを明らかにした。またヒストンアセチルトランスフェラーゼとは拮抗する活性を持つヒストン脱アセチル化酵素もヌクレオチド除去修復因子の集積に必要とされることも明らかにしつつある。既に報告されていることであるがメラノーマ細胞の多くは特にS期のヌクレオチド除去修復に欠陥を持つものが多いが、この細胞特異的な現象に我々の発見したHBO1やHDACがどのように関わるのかさらに研究を進め明らかにしたいと考えている。
2: おおむね順調に進展している
今年度まで主にヌクレオチド除去修復に関わる細胞内コファクターとしてヒストンアセチルトランスフェラーゼとの関わりに主眼を置き研究を進めてきた。これらの研究結果をまとめ原著論文として報告している(Niida et al. Nature Communications, 2017).最近ヒストンアセチルトランスフェラーゼと反対の活性を示すヒストン脱アセチル化酵素も同様にヌクレオチド除去修復因子の集積に必要とされることを見出しその機能解析を行っている。
ヒストン脱アセチル化酵素とヌクレオチド除去修復機構の解析をさらに進める。またS期に特異的にこれらヒストン修飾酵素が関与しているか、さらにメラノーマ細胞のヌクレオチド除去修復に我々の発見したヒストンアセチルトランスフェラーゼとヒストン脱アセチル化酵素が如何に関わっているかを明らかにするため研究を進めたい。
研究課題についてあらたに関与する分子を同定したため研究経費を次年度に使用する必要が生じた。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Cereb Cortex
巻: 11 ページ: 1-14
10.1093/cercor/bhy253