課題1:IQGAP3ノックアウト培養上皮細胞で認められていた細胞質分裂異常が安定しないという問題があったため、複数クローンの比較検討を進めていたが、最終的に再現性のある有意な異常は認められないという結論を得るに至った。用いていた上皮細胞株EpH4がもともとクローンごとの差異の大きい細胞であったために生じた問題であると思われ、現在は他の細胞株に切り替えて解析を進めている半ばである。 課題2:IQGAP3ノックアウトマウスの解析は、他の研究課題に予算と労力を取られてしまった結果、ほとんど進めることができなかった。 課題3:細胞増殖に対し重要な機能を持つことが広く知られている複数の増殖因子受容体に対し、IQGAP3がin vitroおよびin vivoで結合することを新たに見出した。また、各分子内で両者の結合に関与する領域の同定にも成功した。そこでこれらの受容体分子がIQGAP3による細胞増殖制御に対し機能的に関与しているかについて明らかにするため、IQGAP3のノックアウト細胞における各受容体の分子的挙動(発現量・リン酸化・細胞内局在)を検討したが、コントロールの細胞と比較していずれの点でも顕著な変動は認められなかった。そのため現時点ではこれら受容体とIQGAP3との機能的関連は不明である。なお、逆にIQGAP3が該当受容体の細胞増殖制御における機能に対して関与するかについても併せて検討したが、受容体分子のノックダウンによってIQGAP3の発現量が顕著に減少したものの、これが受容体の機能にIQGAP3が直接関与することを示すものであるかは不明である。 課題4:IQGAP3の結合因子である因子Aが細胞増殖に関与することを見出していたが、これまでのところIQGAP3との関連を明らかにできていない一方で他の分子機構を示唆する結果が得られており、現在その解析を進めている。
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