研究課題/領域番号 |
16K08583
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大森 義裕 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (90469651)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 繊毛 |
研究実績の概要 |
本研究提案では、脊椎動物モデル(ゼブラフィッシュやキンギョ、マウス)を用いて、生体における繊毛の役割を解明する。平成29年度は、新規な繊毛関連遺伝子の3系統の遺伝子欠損マウス作成が完了し表現型の観察を開始している。それぞれのステージにおける組織の蛍光免疫染色を行い組織の正常性を観察している。視細胞繊毛局在蛋白質の発現を制御する蛋白質であるSamd7について機能解析を行った。Samd7は桿体視細胞に発現し錐体オプシンなど視細胞の修飾繊毛である外節に局在する蛋白質の発現をエピジェネティックに制御することが明らかとなった。Samd7はポリコーム複合体の組織特異的な構成要素としてヒストンH3K27me3の制御を行っていることや、ポリマーを形成してクロマチン構造の制御を行う可能性が示唆された。これらの研究は論文として発表し、学会においても口頭発表を行った。また、共同研究により視細胞繊毛の根本部分に局在する蛋白質の機能解析をすすめている。この遺伝子には繊毛関連網膜疾患の患者とその家系において変異が見いだされ、疾患の原因遺伝子である可能性が強く示唆された。これらの結果は、論文として発表準備中である。さらに、キンギョを用いた繊毛機能の解析を進めている。繊毛関連異常による表現型を見出し現在、キンギョ変異体の全ゲノムシーケンスを進めている。繊毛を介したシグナルの異常がキンギョの形態形成に与える影響の観察を行っている。今後は、キンギョ変異体の表現型を誘導する遺伝子異常をほかのキンギョ系統と比較することにより詳細に解析する予定である。一方、新規なゼブラフィッシュ繊毛関連変異体について免疫染色による解析やこの変異がオプシン輸送能に与える影響を詳細に解析する予定である。これらの研究により、脊椎動物の発生における繊毛の新たな機能が明らかになることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、新規な繊毛関連遺伝子のKOマウスの解析については、予定していた3系統を作成が完了し表現型の観察を開始している。それぞれ、胎生期、網膜発生期(生後14日目まで)、視細胞の維持(生後2か月以上)についての表現型解析をおこなっている。繊毛局在マーカーを用いてこれらのそれぞれのステージにおける組織の蛍光免疫染色を行い組織の正常性を観察している。また、網膜電図による解析を行い電気生理的な異常の検出を行っている。視細胞繊毛局在蛋白質の発現を制御する蛋白質であるSamd7について機能解析を行った。また、遺伝子欠損マウス網膜のマイクロアレイ解析により錐体遺伝子の発現が上昇し逆に桿体遺伝子の発現が低下していることを見出した。Samd7は桿体視細胞に発現し錐体オプシンなど視細胞外節に局在する蛋白質の発現をエピジェネティックに制御することが明らかとなった。Samd7はポリコーム複合体の組織特異的な構成要素としてヒストンH3K27me3の制御を行っていることや、ポリマーを形成してクロマチン構造の制御を行う可能性が示唆された。これらの研究は論文として発表し、学会においても口頭発表を行った。また、共同研究により視細胞繊毛の根本部分に局在する蛋白質の機能解析をすすめている。この遺伝子には繊毛関連網膜疾患の患者とその家系において変異が見いだされ、疾患の原因遺伝子である可能性が強く示唆された。この蛋白質に対する抗体を入手し蛍光免疫染色を行った結果、繊毛の根本部分にシグナルが見られた。これらの結果は、論文として発表準備中である。さらに、キンギョを用いた繊毛機能の解析を進めている。繊毛関連異常による表現型を見出し現在、キンギョ変異体の全ゲノムシーケンスを進めている。繊毛を介したシグナルの異常がキンギョの形態形成に与える影響の観察を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、キンギョ変異体の表現型を誘導する遺伝子異常をほかのキンギョ系統と比較することにより詳細に解析する予定である。遺伝子発現についても次世代シーケンサーを用いたRNA-seq法やQPCR法などを用いて解析を行う。また、新規な3系統の繊毛関連変異マウスの解析を今年度中に進める予定である。一方、新規なゼブラフィッシュ繊毛関連変異体について免疫染色による解析やこの変異がオプシン輸送能に与える影響を詳細に解析する予定である。これらの研究により、脊椎動物の発生における繊毛の新たな機能が明らかになることが期待される。
|