本研究提案では、脊椎動物モデル(ゼブラフィッシュやキンギョ、マウス)を用いて、生体における繊毛の役割を解明する。平成30年度は、新規な繊毛関連遺伝子の3系統の遺伝子欠損マウス作成が完了し表現型の観察を行ってきた。それぞれのステージにおける組織の蛍光免疫染色を行い共焦点蛍光顕微鏡による観察を行った。また、視細胞繊毛の根本部分に局在する蛋白質SCLT1の解析をすすめた。この遺伝子には繊毛関連網膜疾患の患者とその家系において変異が見いだされ、疾患の原因遺伝子である可能性が強く示唆された。マウス網膜を用いた蛍光免疫染色を行い、SCLT1が繊毛基部の中心体の近傍に局在することが明らかとなった。これらの結果は、オープンアクセスオンラインジャーナルScientific Reports誌に発表を行った。さらに、キンギョを用いた繊毛機能の解析を進めている。繊毛関連異常による表現型を見出し現在、キンギョ変異体のゲノム解析を進めている。この解析のためには、キンギョの全ゲノムリファレンス配列が必要となるが、今年度、キンギョの全ゲノム配列をPacBioロングリード次世代シーケンサーを用いて解析し論文として発表を行った。キンギョの全ゲノム重複とRNA-seq解析による網羅的な遺伝子発現のパターンが明らかとなった。一方、新規なゼブラフィッシュ繊毛関連変異体について免疫染色による解析やこの変異がオプシン輸送能に与える影響を詳細に解析し論文の発表準備を進めている。これらの研究により、脊椎動物の発生における繊毛が機能するメカニズムの一端が明らかとなった。
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