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2017 年度 実施状況報告書

RNA-RNA結合蛋白質の新規ネットワークを介した疾患発症及び生体制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K08590
研究機関高知大学

研究代表者

坂本 修士  高知大学, 教育研究部医療学系 基礎医学部門, 准教授 (80397546)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード骨格筋 / 二本鎖RNA結合タンパク質 / 筋再生 / サテライト細胞
研究実績の概要

サテライト細胞は、筋損傷後に再生を担う筋幹細胞として骨格筋の維持には欠かせない。我々はこれまでにマイクロRNA (miRNA) の生合成において、二本鎖RNA結合タンパク質であるNF90-NF45が負の制御因子として作用することを見出してきた。加えて、NF90-NF45が過剰発現した遺伝子改変マウス (NF90-NF45 dbTg mice)の骨格筋では筋萎縮と共にサテライト細胞のマーカーであるPax7の発現が顕著に上昇していることを見出している。このことはNF90-NF45がサテライト細胞の発生に促進的に作用している可能性を示している。さらにNF90-NF45 dbTg miceの骨格筋においては、筋分化miRNAでありPax7を標的とするmiR-1の発現が顕著に低下していることもわかっている。これらの知見より過剰発現したNF90-NF45がmiR-1の生合成を抑制することでPax7の産生が上昇しサテライト細胞の発生が促進するのではないかと想定された。この可能性を検証するために申請書の研究計画に沿ってコブラ由来毒素であるカルディオトキシン(CTX)投与による筋再生モデルマウスを用いた解析を行った。マウスの前脛骨筋にCTXを投与すると、「筋損傷」から「サテライト細胞の増殖・分化」を経て「筋再生」に至る一連の過程を解析できる。そこで、この過程におけるPax7及びNF90-NF45の発現を解析した。その結果、Pax7は筋損傷後Day1で発現が顕著に上昇し、その上昇はDay7まで続いた。一方、NF90-NF45は損傷後Day3~7の間に発現上昇した。このことより、損傷直後のPax7の上昇にはNF90-NF45は関与しないが、損傷後Day3~7までのPax7の発現上昇にはNF90-NF45-miR-1経路が関与する可能性は考えられた。この可能性に関しては、さらに検証が必要となる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成28年度から開始した本研究課題は大きく下記の3つの研究計画に分かれる。
1. がん部におけるNF90-NF45の発現増加メカニズムの解明、2. 骨格筋の幹細胞であるサテライト細胞の発生におけるNF90-NF45の役割の解明、3. 内在性NF90-NF45が膵ラ島a/b細胞のホルモン分泌及び生存に及ぼす影響の解明。
項目1に関しては、平成28年度に主に解析を進め、がん抑制miRNAであるmiR-7がNF90 mRNAを標的にすることを見出し、がん部においてNF90-NF45がmiR-7生合成を抑制することでNF90の発現を上昇させるフィードバック制御機構を見出すことができた。
項目2の関連については、平成29年度に主に解析を進め、上記概要にある「筋再生モデルマウスを用いた解析」以外にも、NF90-NF45 dbTg miceの骨格筋萎縮のメカニズムの解明にも取り組み、dbTg miceの骨格筋や筋芽細胞であるC2C12細胞を用いて解析を進めた。その結果として、NF90-NF45は筋分化過程の細胞融合において抑制的に作用する可能性を見出すことができた。この知見は、未分化性が高いサテライト細胞の増加にもリンクする可能性がある。今後はNF90-NF45 dbTg miceの骨格筋におけるNF90-NF45の結合パートナーをタンパク質とRNAに着目して網羅的な解析を行い、当該データを「筋萎縮」や「サテライト細胞の発生」におけるNF90-NF45の作用機序の解明に繋げる。
項目3の推進に関しては、NF90もしくはNF45を膵ラ島特異的にノックアウト(KO)するマウスの作製が必要と考え、平成29年度よりその作出を進めている。現在、NF45に関しては目的とする遺伝子型を有する個体を得るに至り、平成30年度は本格的に当該マウスを用いた表現型の解析に取り組む。

今後の研究の推進方策

今年度(平成30年度)は本研究課題の最終年度となる。
これまでの研究計画の遂行により、「がん部におけるNF90-NF45の発現増加メカニズムの解明」に関しては、「miRNAを介したフィードバック制御機構」の存在を見出すことができ、本項目の目的の一部分は達成された。
一方で、「筋幹細胞であるサテライト細胞の発生におけるNF90-NF45の役割」に関しては未だ十分に解明が進んでいるとは言えない。NF90-NF45 dbTg miceの骨格筋におけるNF90-NF45の結合パートナー(タンパク質及びRNA)の同定を進めることが本項目達成のカギとなると考え、当該解析を進める。同時に本項目に関しては骨格筋特異的にNF90をKOしたマウスが重要と考え、現在、その作出に取り掛かっている。
平成30年度に最も解析に注力すべきは、「膵ラ島における内在性NF90もしくはNF45の役割の解明」である。現時点で、膵ラ島beta細胞特異的にNF45がKOされていると考えられる遺伝子型を有する個体を得るに至った。今年度(平成30年度)は野生型マウスと膵beta細胞特異的NF45KOマウスを用いて両マウス間の血糖値及びインスリン分泌量の比較、beta細胞の形態的変化等に着目し、解析を進める。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (8件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Institute of Human Genetics(France)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      Institute of Human Genetics
  • [国際共同研究] State Key Laboratory of Oncology(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      State Key Laboratory of Oncology
  • [雑誌論文] An NF90/NF110-Mediated Feedback Amplification Loop Regulates DICER Expression and Controls Ovarian Carcinoma Progression.2018

    • 著者名/発表者名
      Barbier J, Chen X, Sanchez G, Cai M, Helsmoortel M, Higuchi T, Giraud P, Contreras X, Yuan G, Feng Z, Nait-Saidi R, Deas O, Bluy L, Judde JG, Rouquier S, Ritchie W, Sakamoto S, Xie D, and Kiernan R
    • 雑誌名

      Cell Research

      巻: 28 ページ: 556-571

    • DOI

      10.1038/s41422-018-0016-8

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 夏期の柚子果皮給与が褐毛和種高知系の肥育に与える影響-オミクス解析による検討2017

    • 著者名/発表者名
      1. 薮本美月、岩本侑希子、樋口琢磨、坂本修士、森澤啓子、岩佐茜、久保里加、宅谷はるこ、竹中由布、竹村泰雄、垣渕和正、石田豊、松川和嗣.
    • 学会等名
      第123回 日本畜産学会
  • [学会発表] 二本鎖RNA結合タンパク質によるケモカインCXCL5の発現制御を介した癌細胞の浸潤制御機構の解明2017

    • 著者名/発表者名
      樋口琢磨、三輪武司、森澤啓子、Sylvia Lai、坂本修士
    • 学会等名
      第58回日本生化学会 中国・四国支部例会
  • [学会発表] 骨格筋において過剰発現したNF90-NF45は赤筋化を誘導する.2017

    • 著者名/発表者名
      坂本修士, 森澤啓子, Sylvia Lai, 樋口琢磨, 戸高寛, 池恩秀, 杉山康憲, 津田雅之.
    • 学会等名
      ConBio2017
  • [学会発表] NASHモデルマウスの肝細胞においてNuclear Factor 90の発現は増加する.2017

    • 著者名/発表者名
      樋口琢磨, 宗景玄祐, 矢生健一, 森澤啓子, Sylvia Lai, 松川和嗣, 津田雅之, 小野雅文, 坂本修士.
    • 学会等名
      ConBio2017
  • [学会発表] RNA結合タンパク質を介した新たな膵beta細胞増殖機構の解明.2017

    • 著者名/発表者名
      Sylvia Lai, 樋口琢磨, 津田雅之, 森澤啓子, 杉山康憲, 坂本修士.
    • 学会等名
      ConBio2017
  • [学会発表] 膵臓beta細胞におけるコレステロール増加はインスリン発現を抑制する.2017

    • 著者名/発表者名
      藤井修作, 飯田悟史, 戸高寛, 樋口琢磨, 坂本修士, 村尾孝児, 杉山康憲.
    • 学会等名
      ConBio2017
  • [学会発表] 糖毒性状態の膵臓bata細胞においてDclk1はインスリンの発現を抑制する.2017

    • 著者名/発表者名
      井戸彩詠, 樋口琢磨, 戸高寛, 坂本修士, 村尾孝児, 杉山康憲.
    • 学会等名
      ConBio2017
  • [学会発表] 凍結乾燥によるマウス胚性繊維芽細胞の保存.2017

    • 著者名/発表者名
      宮野友里, 本郷新, 田村慎之介, 樋口琢磨, 坂本修士, 枝重圭祐, 松川和嗣.
    • 学会等名
      Cryopreservation Conference 2017
  • [備考] 高知大学 総合研究センター 生命・機能物質部門 生体機能解析分野 分子生物学教室

    • URL

      http://www.kochi-ms.ac.jp/~ct_mrc/academic/

URL: 

公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-02-22  

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