研究課題
二本鎖RNA結合タンパク質であるNF90-NF45が過剰発現した遺伝子改変マウス(NF90-NF45 dbTg mice)の骨格筋では「筋萎縮」及び「筋幹細胞マーカーの発現上昇」が見出されている。しかしながら、その発症機構に関しては不明である。これらの点の解明を目指し、本年度は、NF90-NF45 dbTg miceの骨格筋においてNF90と相互作用する因子を免疫沈降及び質量分析により同定した。その結果、SERCAが同定された。SERCAは筋小胞体へのCa2+取り込みを促進する因子である。加えて、マイクロアレイ解析により、dbTg miceではSERCAの機能を抑制するsarcolipin (SLN)の発現が顕著に増加していることも見出された。これらの知見より、NF90-NF45は筋組織において筋小胞体へのCa2+取り込みを抑制する可能性が示唆された。SLNは未成熟な筋組織を有する胎児期から新生児期に発現が増加し、筋成熟に伴い発現が減少する。従って、dbTg miceの骨格筋における「筋萎縮」及び「筋幹細胞マーカーの発現上昇」は、NF90-NF45による筋小胞体へのCa2+取り込み制御を伴う「筋組織の未成熟化」に起因するのではないかと考えられた。一方で、内在性NF90-NF45の機能解析の一環として進めている膵ラ島におけるNF90-NF45の役割に関しては、膵beta細胞株においてNF90-NF45をノックダウン(KD)することにより細胞増殖が有意に低下することを見出した。加えて、マイクロアレイ解析により、NF90-NF45KD細胞においてはアポトーシス促進因子であるTp53inp1の発現が増加することも見出した。これらの知見より、膵ラ島において内在性 NF90-NF45はアポトーシス促進因子であるTp53inp1の発現を抑制することで膵beta細胞の増殖を促進する可能性が示唆された。
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http://www.kochi-ms.ac.jp/~ct_mrc/academic/index.html