研究課題/領域番号 |
16K08595
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
松丸 大輔 和歌山県立医科大学, 先端医学研究所, 助教 (50624152)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 総排泄腔 / 直腸肛門奇形 / Shh / イメージング |
研究実績の概要 |
本研究は、総排泄腔周辺組織の発生が総排泄腔の分割に及ぼす影響を解析し、肛門直腸奇形(Anorectal malformation: ARM)の発症過程、特に、現在までほとんど明らかとなっていない女性型ARMの発症メカニズムを解明することを目標としている。 平成28年度は、マウスコロニーの拡大と解剖学・組織学的データの収集を行なった。基礎的な組織データとして小動物用マイクロCTを用いた雌性生殖器(Female reproductive tract: FRT)と尿生殖洞(Urogenital sinus: UGS)の分離過程のイメージング解析を試み、さらに連続切片から同領域の三次元再構築を行なった。これらの解析からUGS-FRT分離過程を経時的かつ立体的に把握することに成功した。また、Shh(Sonic hedgehog)遺伝子の発現がUGS領域に限局することを利用し、UGS由来領域とFRT(ミュラー管)由来領域の境界を三次元的に可視化した。その結果、UGSとFRTの結合部はUGS側から隆起した構造をとることが明らかとなった。加えて、FRTとUGSの境界領域の上皮はくびれ状構造を示すことがわかり、この構造中において細胞死や細胞増殖の偏在は観察されなかった。また、薬剤誘導型遺伝子改変マウスを用いた総排泄腔周辺の間葉細胞の標識を行ってきたが、現在、総排泄腔分割領域での間葉細胞の動きの傾向を明らかにするためのサンプルが蓄積しつつある。ライブイメージングに使用予定の核内蛍光タンパク質発現マウスコロニーは拡大しつつあり、Creドライバーマウスとの複合遺伝子改変マウスの作成も準備が整いつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マイクロCT等の三次元的解析手法を用いてUGS-FRTの分離過程を可視化し、構造の特徴等を時空間的に解析できた点は予定通りの進展であった。また、初期総排泄腔における腸管とUGS領域との分割過程、出生前後のUGS-FRTの分離過程の類似点と相違点に関して解析を進めてきたが、これまでのところ、初期総排泄腔分割過程に見られるような上皮細胞の細胞死はUGS-FRT分離過程においては観察されなかった。すなわち、それぞれの管腔分離過程は異なるメカニズムによるものであると推察された。また、初期総排泄腔分割において周辺器官の発生が与える影響の解析に関しては、タイムラプスイメージングにおける解析を予定しているが、培養条件、観察条件の検討が不十分であるため、この点を克服する必要がある。マウスコロニーの準備状況に関しても、次第に増えてきてはいるが実際に解析を開始するには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の解析によって、UGS-FRTの基本的な分離過程に関してはデータが集まりつつある。その結果として、初期総排泄腔分割過程とUGS-FRT分離過程は異なる細胞メカニズムによって制御されていると推察された。平成29年度は、これらの管腔分離過程に関わる分子のスクリーニング、遺伝子発現解析を行う予定である。また、初期総排泄腔分割に周辺器官が及ぼす影響を解析するため、ライブイメージング用マウスの作成と、培養・撮影条件の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、前年度延長申請した研究課題の影響により本課題の遂行のための時間が予定よりも少なかった。このため、組織解析のための支出が少なく、学会での成果発表も見送ったことにより未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
マウス組織の解析のための試薬・抗体類の購入と、手術や個体サンプルの保存に用いるプラスチック器具類の購入を予定している。
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