肛門直腸奇形(Anorectal malformation: ARM)は、雄性にも雌性にも起こりうるが、雄性仔の場合の発症メカニズムが総排泄腔が泌尿器側と腸管側に分かれていく段階の異常であると説明されうる。しかし雌性においては、腸管と女性生殖器、あるいは泌尿器と腸管と女性生殖器が同一の管腔に開口する場合がありその原因メカニズムの説明は十分になされているとは言えない。平成30年度は、マイクロCTを用いて網羅的に野生型雌性マウスの器官形成期-新生仔期サンプルの画像のCT採取し画像解析をおこなった。この解析により、総排泄腔分割後の胎生後期において女性生殖器が膀胱基部側に結合し、次第に体外側に移行していく管腔の移動を視覚的に明らかにすることができた。また、ARMの症状を呈する条件付きShh遺伝子改変マウス、内胚葉特異的b-catenin機能獲得マウスの採取を行い、マイクロCT解析を行った。また、尿管芽由来組織の欠損によって生じる総排泄腔-膀胱の形態への影響を解析するため、遺伝学的細胞除去マウス胎仔を採取し、マイクロCT解析を行った。これらの解析の結果、三次元的な管腔構造の異常を見出した。加えて、薬剤誘導型遺伝子改変マウスを用いて、Cre組換え酵素の薬剤非依存的な活性化を利用した細胞集団解析を2系統の薬剤誘導型Creマウスを用いておこなった。CAGGS-CreERTM、Rosa26-CreERT2のどちらの系統を用いても外生殖器原基において基部側から先端側にかけて分布する細胞集団が観察され、外生殖器形成時の細胞の流れが存在する可能性が示唆された。これらの結果は、今後肛門直腸奇形の発症メカニズムを解明する上で重要な基盤となると考えている。
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