研究課題/領域番号 |
16K08596
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
奥野 利明 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60361466)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | GPCR / インバースアゴニスト / 立体構造解析 / BLT1 / LTB4 |
研究実績の概要 |
本年度は、LTB4の受容体BLT1とインバースアゴニストBIIL260の複合体の結晶構造解析に成功した。その結果、BIIL260に含まれるベンザミジン基が、BLT1のNa+ー水クラスター結合部位に結合していることがわかった。ベンザミジン基内のプロトン化アミジン基は、GPCRで高度に保存されているアスパラギン酸残基、二つのセリン残基とそれぞれ塩橋と水素結合を形成していた。また、ベンザミジン基内のベンゼン環は、バリン残基とトリプトファン残基と相互作用していた。この相互作用は、Na+ー水クラスターの相互作用を模倣しているため、ベンザミジン基はNa+ー水クラスターと同様に、不活性状態のBLT1の立体構造を安定化していると考えられた。したがって、ベンザミジン基はGPCRの7回膜貫通ヘリックス束の活性状態への構造変化を阻害し、Na+ー水クラスターと同様に不活性状態の立体構造の維持に寄与すると考えられた。 さらに、BIIL260のベンザミジン基の代わりにベンザミジン分子を用いて、LTB4依存的なBLT1活性を抑制するかを検証した。LTB4刺激によるBLT1のGタンパク質活性化は、ベンザミジン濃度依存的に抑制され、Hill-Plot解析により、ベンザミジン分子はアロステリックにBLT1活性化を抑制することがわかった。 さらに、BLT1同様、クラスAのGPCRであるβ1アドレナリン受容体でも、ベンザミジンによる活性抑制効果を確認した。ベンザミジン基が結合した部位のアミノ酸残基はクラスA GPCRでよく保存されているため、他の多くのクラスA GPCRにもベンザミジン分子が抑制的に作用する可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定にはなかったが、インバースアゴニストが結合したBLT1の構造を明らかにし、GPCRのインバースアゴニストを設計する上で重要な情報を得ることができたから。
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今後の研究の推進方策 |
BLT1のインバースアゴニストとしてさらに優れた化合物を同定し、BLT1を標的とした創薬基盤の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定にない共同研究の依頼が多く、当初予定していた研究が遅れたため。 主に消耗品や旅費に使用する予定である。
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