研究課題/領域番号 |
16K08600
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
林 寿来 愛知医科大学, 医学部, 講師 (30533715)
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研究分担者 |
中原 努 北里大学, 薬学部, 教授 (10296519)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 血管新生 / 加齢黄斑変性 / 脈絡膜 / VEGF / G蛋白 |
研究実績の概要 |
我々は以前、三量体G蛋白質の制御因子としてAGS8を同定した。AGS8はC末端でGbgサブユニットと結合し、G蛋白共役受容体とは独立して働く分子である。また最近、培養血管内皮細胞による解析により、AGS8はGbgサブユニットとともにVEGF受容体(VEGFR-2)と複合体を形成し、VEGFシグナルを制御することを報告した。ところが現在までのところ生体内の血管におけるAGS8の生理学的意義は明らかでない。そこで本研究では、脈絡膜血管内皮細胞におけるAGS8の意義の解明、およびAGS8発現の制御を目指した。まず、脈絡膜血管内皮細胞由来の培養細胞RF6Aにおいて、siRNAによるAGS8のknockdown を行なった。その結果、VEGFが誘導するRF6A細胞の増殖、細胞移動、管腔形成が抑制されるとともに、VEGF2型受容体(VEGFR-2)リン酸化の抑制が認められた。このことから、脈絡膜血管内皮細胞でのVEGFシグナル伝達におけるAGS8の重要性が示唆された。次に我々は光凝固レーザー照射によって、マウス脈絡膜に血管新生の誘導を行った。Realtime-PCRおよび免疫染色によると、AGS8は術後2-4日目に有意に発現量が増加しており、その発現部位は脈絡膜由来の新生血管特異的であることが判明した。そこでAGS8 siRNAを硝子体内に投与し脈絡膜におけるAGS8発現を抑制したところ、レーザー照射による脈絡膜新生血管の面積が減少した。同様に、ex vivoマウス脈絡膜片培養において、VEGFが誘導する脈絡膜内皮細胞の管腔形成能は、AGS8 knockdownによって有意に抑制された。以上のことからAGS8は脈絡膜内皮細胞においてもVEGFシグナルを制御し、生体内で血管新生を制御していること、またAGS8発現の抑制は脈絡膜血管新生を特異的に抑制することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1) AGS8の発現部位は今回通常の免疫染色法によって新生血管特異的であることが判明した。しかし最近、AGS8の免疫染色法をチラミドシグナル増幅 (TSA)を用いて工夫し高感度に検出することに成功した。この方法を用いて、はたして本当にAGS8の発現部位は新生血管だけであるのか、あるいは弱いながらも他部位にAGS8発現が見られるのかについて確認をしたい。 2) 1と同様の方法を用いて、眼以外の組織におけるAGS8のタンパク質レベルでの発現パターンはわかっていないため、明らかにしたい。この結果はAGS8をAMDにおける標的分子とする場合の副作用を考慮する上で非常に重要であると考えられる。 3) Gbgサブユニット-AGS8の相互作用の重要性を検証するために、AGS8c端配列由来の合成ペプチドをマウス硝子体に投与し、レーザー照射が誘導する血管新生抑制作用が得られるのかにつてい検討を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験補助への支出を予定していたが、その必要なく自力で計画を遂行することができた。そのため次年度利用額が生じた。
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