研究課題
幹細胞老化の根幹的なメカニズムにmicroRNAが関与しており、それを解明・制御することで組織恒常性の破綻におけるmicroRNAが果たす役割を明らかにするのが本研究の目的である。これまでに、miR-17ファミリーが複数の幹細胞の老化に共通して関与しており、その発現を回復させることで衰えた分化能や分泌因子の発現などを改善できることを明らかにし、2016年にAging誌に報告を行った。しかし、老化した幹細胞ではmiR-17ファミリーだけでなく、多くのmicroRNAの発現が低下しており、さらなる解析が必要である。本研究によりmicroRNAの発現低下により特定の機能が障害されることが明らかになったが、それに関連して発現量を変動させるmicroRNAの数が多く、どのmicroRNAが重要なのかは不明であった。網羅的発現解析のデータから25の候補microRNAを選別し、CRIPR/Cas9システムによりノックアウトして機能的スクリーニングを実施し、必須なmicroRNAを同定することができた。特定の組織幹細胞特異的に老化を誘導できるコンディショナルノックアウトマウスを作製し、若齢時に人為的な幹細胞機能障害を誘導した結果、遠隔の組織への機能障害の伝播が確認された。これは個体スケールの老化プロセスの解析にも重要な知見であると考えられる。今後、さらに解析を進め、特定の組織の機能障害がどのように個体老化に影響するか、分子レベルで解明を試みる。また、若齢および老齢マウスの腸管上皮幹細胞の比較を行い、DNA損傷応答能が低下している事を明らかにした成果をInflammation and Regeneration誌に発表した(Watanabe K. et al. 2019)。
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Inflammation and Regeneration
巻: 39 ページ: 8
https://doi.org/10.1186/s41232-019-0096-y