研究課題
心臓流出路および右心室領域は二次心臓形成領域(Second Heart Field; SHF)の中胚葉細胞由来の組織であり、SHF発生の分子機構の解明は心臓前駆細胞から心筋分化過程における分子レベルでの理解および先天性心疾患の原因解明において重要な意義を持つ。本研究ではSHFで発現し、心臓流出路・右心室形成において重要な機能を担っているLIM-ホメオドメインを含む転写因子Islet1に注目し研究を進めてきた。発生中のマウス胚心臓でのIslet1による転写制御機構を理解するために、Islet1転写複合体構成因子を明らかにすることを目指した。CRISPR/Cas9ゲノム編集法により作製したIslet1-FLAGノックインマウス胚では、内在性のIslet1と同様の発現パターンが確認できた。さらに、同マウス胚と抗FLAG抗体を用いた免疫沈降実験では、Islet1-FLAGとLdb1が共沈することが観察された。Ldb1はIslet1が標的DNA配列に結合する上で必要であることが知られており、マウス胚においても両者の相互作用が行われていることが示された。平成30年度は、Ldb1と結合し転写活性化に関与することが知られているSsbp2、Ssbp3に着目して解析を進めた。培養細胞における強制発現系を用いた共免疫沈降解析において、Islet1-FLAGとSsbp2-HAおよびSsbp3-HAは共沈することが確認された。さらにIslet1-FLAGノックインマウス胚ライセートを用いて、抗FLAG抗体による免疫沈降-質量分析を行った際にSsbp2、Ssbp3は共沈していることが観察された。以上の結果から、発生中のマウス胚においてIslet1とLdb1、Ssbp2/Ssbp3が相互作用していることが明らかとなり、それらの複合体がSHFにおいて標的遺伝子の転写を制御している可能性が示唆された。
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