研究実績の概要 |
糖尿病性腎症は発症メカニズムの詳細が不明であったためこれを直接標的にした薬剤はこれまで存在していない。しかし最近、腎メサンギウム細胞のグルコース応答性転写因子ChREBP(carbohydrate responsive element-binding protein)が糖尿病性腎症発症に深く関連していることが示唆されてきている(Isoe et al., Kidney Int, 2010, 78, 48-59)。そのことから、本研究課題ではChREBPの転写活性を制御する因子群を同定することで、糖尿病性腎症の創薬標的を提案することを目的としている。 本年度の内容としては、平成28年度における研究において決定した実験条件に基づき、腎メサンギウム細胞からのChREBP転写共役因子の同定を行った。組織特異性を確認するために、肝臓、膵臓由来の細胞も同時並行的に用いている。 その結果、腎メサンギウム細胞由来のChREBP結合因子として計139種類のタンパク質の同定に成功した。これらの中には、これまでChREBPとの結合が知られているMlxやHNF4a等も含まれていることから本実験の結果は信頼できると考えている。これらの同定された因子群の中から特に転写に関連すると考えられる因子を過去の文献やドメインのデータベースより抽出してクローニングを行った。 さらにクローニングした因子群の中からChREBPの転写活性に影響を与える因子をルシフェラーゼレポーターアッセイによって絞り込みを行ったところ、ChREBPの転写活性を抑制する新規因子を数種類取得することができた。これらの因子についてはさらなる詳細な分子解析を行っていく予定である。
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