本研究では生体でのUCP1発現脂肪細胞の増減を非侵襲的に検出できる動物モデルを作製するため、CRISPR/Cas9システムを用いて、マウスUcp1遺伝子座に近赤外蛍光タンパク質iRFP720をコードする遺伝子を挿入した。CRISPR/Cas9システムに用いるガイドRNAはUcp1遺伝子の翻訳開始部位周辺に複数設計した中から最も効率の良いものを選択し、蛍光タンパク質遺伝子を含むドナーベクターとともにマウス受精卵に導入した。得られた82匹のF0マウスのゲノムPCRの結果、約20%にあたる複数のマウスにおいてUcp1遺伝子座への蛍光タンパク質遺伝子のノックインが検出され、さらに次世代のF1マウスにも引き継がれることを確認した。IVIS (In Vivo Imaging System) を用いてマウスの背部を観察したところ、肩甲骨間の領域に強い蛍光シグナルを検出した。このマウスを解剖し、この蛍光源が実際にUCP1を高発現する褐色脂肪組織であることも確認した。また、アドレナリンβ3受容体アゴニストであるCL316243を投与したマウスにおいて、鼠蹊部白色脂肪組織に強い蛍光シグナルを検出し、ベージュ脂肪細胞の誘導も非侵襲的に検出できることを明らかにした。さらに、鼠蹊部白色脂肪組織を単離してiRFP720やベージュ脂肪細胞のマーカー遺伝子が発現していることも示した。HE染色を行ったところ、CL316243投与により脂肪滴および細胞のサイズの縮小化が見られ、ベージュ脂肪細胞の出現を支持する結果を得た。これらの結果から、本研究で作製したUCP1イメージングマウスが褐色脂肪細胞だけでなく、ベージュ脂肪細胞の誘導をも非侵襲的に蛍光でモニターできることが明らかになった。
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