研究課題
CDXによる腸分化誘導によって増殖停止を来す2種類の胃癌細胞株を用いたマイクロアレイの結果から、増殖停止を起こす際には、腸分化の誘導とともに胃分化傾向の減弱が同時に起こっていることが明らかとなった。次にゲノムインフォマティクス専門家の協力を仰ぎ、CDX発現と関連するプローブマーカーを選定した。この際には、1) CDX2に関連するプローブマーカー(112遺伝子)、2) CDX1に関連するプローブマーカー(118遺伝子)、3) CDX2・CDX1の両者に共通して関連するプローブマーカー(18遺伝子)、4) CDX2・CDX1のいずれかに関連するプローブマーカー(164遺伝子)、の4通りに分けて、解析した。NCBIに登録された132の胃由来組織(胃癌 111症例、非癌 21症例)の遺伝子発現データについて、CDX関連マーカープローブを用いてクラスタリングを行うと、1)~4)の全てにおいて、非癌・CDX関連プローブ陽性胃癌・CDX関連プローブ陰性胃癌に綺麗に分かれることが明らかとなった。1)~4)の全てにおいて、CDX関連プローブ陽性胃癌の遺伝子発現様式は、CDX関連プローブ陰性胃癌に比べて、明らかに正常に近い発現パターンを呈しており、CDXの発現が胃癌においてがん抑制的に機能することがより確実となった。一方、腸分化誘導を来す薬剤の検索については、蛍光顕微鏡との組み合わせることによって、薬剤ライブラリー約400種についてのスクリーニングを行なったが、発現を誘導する薬剤の発見には至らなかった。新たなライブラリーについて、いくつかの製薬企業のもつライブラリの使用が可能であるか、交渉を開始している。
2: おおむね順調に進展している
予定していた「A) 腸分化誘導による胃癌増殖抑制機構の解明」については、様々な癌化アッセイ、CDX2・CDX1の臨床検体による発現解析に加えて、マイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現の解析についても完了しており、共同研究者との数回の会議を経て、論文作成までが完了した。現在、投稿中である。一方、予定していた「B) 腸分化誘導による胃癌増殖抑制機構の解明」については、薬剤ライブラリー約400種についてのスクリーニングでは発現を誘導する薬剤の発見ができず、新たなライブラリーについて模索している。
「A) 腸分化誘導による胃癌増殖抑制機構の解明」については、論文作成から学術誌への投稿を行っている。また、研究成果を踏まえ、実際の胃癌で腸分化誘導療法の標的となりうる症例がどの程度存在するかを検証するために、多数症例の遺伝子発現データベースの作成を開始する予定である(現在、IRB審査が通り、症例蓄積を開始した)。早期胃癌・進行胃癌の生検組織から抽出した全RNAに対してマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を施行した症例を蓄積することによって、腸分化誘導療法の具体的な可能性を検証してゆく予定である。一方、「B) 腸分化誘導による胃癌増殖抑制機構の解明」については、新たなライブラリーについて、いくつかの製薬企業の持つより大きなライブラリの使用が可能であるか、交渉を開始している。
2017年度は他の研究助成金が使用できたことにより、使用額に残額が生じた。しかし、本研究の成果の投稿料、ならびに、これを踏まえた網羅的遺伝子発現解析の資金として、2018年度に全てを使用する予定としている。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)
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