研究課題/領域番号 |
16K08615
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
小幡 史子 山梨大学, 総合研究部, 助教 (80333566)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 動物モデル / ノックアウトウサギ / コレステロール / アポE |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病(AD)は高齢者に発病する進行性の病気で、治療法は確立されておらず、今後、高齢化社会においてその発病のメカニズムの解明や治療薬の開発は大変重要な課題である。高脂血症とADの相関が指摘されており、コレステロール食によく反応するウサギは高脂血症とADの関係を解明するのに適するモデルと考えられる。我々は、近年CRISPR-Cas9によって可能になった遺伝子改変技術を利用し、アルツハイマー病の危険因子と目されるアポE遺伝子をノックアウトしたウサギを用いて、コレステロール食によって誘発される脳内の病理像を解析した。まず、野生型のウサギにおいて、コレステロール食を摂取させると、脂質を内包したマクロファージである泡沫細胞が脈絡叢内に蓄積することを観察した。さらに、この泡沫細胞の蓄積はコレステロールの濃度依存的に増加することを定量した。野生型とアポE欠損を比べると、アポE欠損ウサギの脈絡叢で泡沫細胞がより増加する傾向にあった。これは、ADの病理像である神経原線維変化の増加が、コレステロール摂食下のアポE欠損ウサギで上昇していたことと関連していると思われる。脂質代謝とアポE,およびADの関係を今後も検討していきたい。 また、in vitroでのAD解析法の開発をめざし、生後1日のウサギ脳からの神経細胞の分離、培養を試みた。その結果、ウサギ海馬からの神経細胞培養は、マウス海馬からの手法を応用して、ほぼマウス神経細胞と同等に培養に成功した。培養日数もほぼマウス神経細胞と同様であり、培養7日目には多数の錐体細胞およびシナプスと思われる構造が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
動物舎内でウサギに感染症が発生したため、全頭処分となった。ノックアウトウサギの精子を凍結保存したものから現在、最初のF1動物4羽が生まれたところである。現在genotyping を行っている。本年度は、このF1世代から繁殖を行う予定。
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今後の研究の推進方策 |
実験に使用できるノックアウトウサギが繁殖するまでには9か月ほどかかるが、その間、若年齢ノックアウトウサギの体重増加、摂餌量、血清コレステロール、中性脂肪、high density lipoporotein cholesterol (HDLC)などの基礎データを収集する。また、すでに解析中の野生型およびアポEノックアウトウサギ脳について、AD病理像となるAbeta1-42およびpTauの免疫染色を行う。さらに、脳内の脂質動向を明らかにするため、アポE、アポCIII、アポAIの免疫染色を行う。また、in vitroモデルを完成させるために、ウサギ脳からのアストロサイト初代培養を試みる。
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