本研究では、血中の高コレステロール血症に伴う、脳の脈絡叢への泡沫細胞の蓄積と、脳内の神経原線維変化の進行がどのように変化するかを検討した。様々な高コレステロール血症の度合いの異なるウサギを用いて大動脈の動脈硬化を測定すると、高コレステロール暴露の期間が長い個体ほど動脈硬化の亢進が見られ、この程度と呼応して、脳の脈絡叢で、コレステロールを蓄えた泡沫細胞の蓄積と重度の個体ではコレステロール結晶の形成が見られた。また、アルツハイマー病の病理像をビルショウスキー染色により検討したところ、高コレステロール血症の程度の低いものから高いものにかけて、神経原線維変化が陽性の神経細胞が増加と、神経細胞の萎縮が、初期段階のアルツハイマー病と関連性の高い脳の部位、臭内皮質や海馬では進んでいたが、関連性の低い脳の部位、鼻周囲皮質や脳梁膨大後部皮質では進んでいないことがわかった。また、脈絡叢の泡沫細胞の蓄積と臭内皮質や海馬での神経原線維変化の間には正の相関があった。この研究の結果から、脈絡叢での泡沫細胞蓄積をアルツハイマー病の早期診断に役立てられる可能性がある。
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