研究課題
C型肝炎ウイルスコア蛋白を発現するトランスジェニックマウスは約30-35%の頻度で、生後18か月頃に小型肝癌の発生を呈する。12-13カ月齢の本マウスにトランス脂肪酸含有食を5カ月間負荷する実験を行い、肝発癌への影響を調べた。トランス脂肪酸含有食には、コントロール食に含まれる大豆油の大部分をショートニングに置き換えた飼料を使用した。実験の結果、トランス脂肪酸含有食を与えたマウスの全てに肝腫瘍がみられ、トランス脂肪酸による強い肝発癌促進作用が示唆された。また、トランス脂肪酸含有食を与えたマウスの肝臓非腫瘍部には、顕著な脂肪肝炎および線維化がみられた。肝臓を解析した結果、炎症性サイトカイン・ケモカインの増加、NF-kappaB活性化、Toll-like receptors経路の活性化、インフラマソーム活性化、過酸化脂質蓄積、NRF2活性化、p62/Sqstm1発現増加、ヒドロキシプロリン蓄積、繊維形成因子の誘導、cell cycle acceleratorsの誘導、ERK活性化、 Wnt/β-catenin経路の活性化などがみられた。PPARα活性化はみられなかった。以上から、本トランスジェニックマウスにおけるトランス脂肪酸含有食の長期摂取は、炎症シグナル活性化、酸化ストレス増加、小胞体ストレス増加、細胞増殖亢進などを生じて肝発癌を促進することが分かった。一方、本発癌機構にPPARαの持続的活性化は関与していないと判断された。本研究から、トランス脂肪酸を豊富に含む食事の摂取はHCV関連肝癌の発症を促す可能性が示唆された。HCV持続感染者ではトランス脂肪酸の摂取量を制限することが肝発癌抑制に有効である可能性がある。
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Arch Toxicol.
巻: in press ページ: -
10.1007/s00204-019-02440-7