研究課題
<Midkine受容体の絞り込み、及びシスプラチン耐性誘導のメカニズム>神経芽腫細胞株において、受容体候補であるNotch2、ALK、LRP1をノックダウンしたところ、いずれも細胞増殖が抑制された。これは、Midkineをノックダウンした際の表現型と一致している。また、神経芽腫細胞株SK-N-BEについて、持続的に低濃度からのシスプラチン存在下で培養することによって耐性を獲得した株BE-R1を樹立した。BE-R1においては、親株と比較してMidkineの発現が2倍に増加していた。更に、Notch2は20倍に増加していたのに対して、ALKは1/10と減少していた。これらのことから、シスプラチン耐性誘導に関しては、Midkine-Notch2というシグナルが寄与している可能性が示唆された。<Midkineシグナルの標的候補遺伝子の同定・解析>Midkineの標的遺伝子の候補と考えているH1FXについて、神経芽腫、及び胎児期における正常な交感神経形成への寄与を検討するために、in vivoでの発現パターンを免疫染色によって検討した。その結果、H1FXは正常、がん化を問わず、完全に未分化な神経芽細胞において強く発現していた。神経芽腫がわずかに分化傾向を示す形態変化を示した段階では、H1FXの発現は完全に消失していることから、神経芽細胞を未分化状態に保つメカニズムへの寄与が示唆される。<Midkine mRNAによるスポンジ効果>神経芽腫細胞において発現しているMidkineのvariantを調べ、報告されている6種類のうち、2種類が発現していることを確認した。それら2つのクローニングを行い、Midkineをノックダウンした表現型をレスキューするかどうかを検討した結果、どちらも細胞増殖を部分的に回復させた。
2: おおむね順調に進展している
「Midkine受容体の絞り込み」と「シスプラチン耐性誘導のメカニズム」については、両テーマを絡めて、シスプラチン耐性誘導において、Midkine-Notch2のシグナルが動いている可能性を見出した。更に、このシグナルが動くことで実際に耐性を獲得している可能性があるBE-R1細胞を樹立できたことから、次年度に、具体的な細胞内シグナル伝達メカニズムにアプローチできる。Midkineシグナル標的である候補にH1FXについては、まずin vivoでの発現パターンにより、神経芽腫への寄与を強く示唆する結果が得られたため、次年度以降のin vitro解析への足固めができた。Midkine mRNAによるスポンジ効果については、レスキューの効率が高くないという課題が出たが、発現量(感染させるレンチウィルス量)を調節するなどして、適切な条件を検討していく。
「Midkine受容体の絞り込み」と「シスプラチン耐性誘導のメカニズム」については、シスプラチン耐性誘導株BE-R1細胞を中心として、細胞内シグナル伝達メカニズムを解析していく。Midkineシグナル標的である候補にH1FXについては、上記BE-R1も含めた神経芽腫細胞株を用いたin vitroでの機能解析を推進していく。Midkine mRNAによるスポンジ効果については、レスキュー条件を整えたのち、表現型(細胞増殖)が完全に回復するかどうか、慎重に評価する。
「Midkine受容体の絞り込み」において、早い段階でNotch2に絞り込まれたため、もう一つの候補であったALKに関して、阻害剤やノックダウン実験を行う予算が一部残った。
平成29年度におけるNotch2に対する阻害剤やノックダウン実験に更に充当し、機能解析を進める。
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Sci Rep.
巻: 6 ページ: srep31615
10.1038/srep31615
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