研究課題/領域番号 |
16K08617
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岸田 聡 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (20402563)
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研究分担者 |
坂元 一真 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60612801)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 神経芽腫 / Midkine / シスプラチン / 骨髄転移 |
研究実績の概要 |
神経芽腫モデルであるTH-MYCN Tgマウスにおいて、シスプラチン治療の効果とMidkineとの関係とを検討する目的で、Midkine +/+とMidkine -/-のTH-MYCN Tgマウスにおける表現型の違いを検討した。骨髄からの再発病巣を標的とし、採取した骨髄細胞を培養してsphereが得られることを指標にして骨髄転移を検出した。未分化な神経芽細胞のみがprimary sphereを形成し、更にそれが腫瘍化していた場合には、passageしてsphereを継代することが可能となる。 まず、Midkine +/+とMidkine -/-に関わらず、10-20%程度の頻度で骨髄転移を確認した。次に、高用量のシスプラチンを投与して生存期間が延長したマウスを経過観察し、「再発」を来す個体を得た。興味深いことに、「再発」個体の骨髄からは、ほぼ100%に近い頻度で骨髄からprimary sphereを培養できた。この結果は、骨髄転移再発が予後を左右する重要な因子となっているヒト神経芽腫の状況をTH-MYCN Tg マウスがよく再現していることを示唆している。この時、Midkine +/+マウスの骨髄から培養したsphere細胞は90%近くpassageできた一方で、Midkine -/-マウスのsphereは、ほぼpassageできなかった。これらの結果から、Midkineが骨髄に転移した神経芽腫細胞のシスプラチン耐性に寄与している可能性が考えられる。 また、これまでのところ、採取した骨髄細胞、及びそこから培養したsphere細胞においては、MKのmRNAは発現しているものの、タンパク質をほとんど検出できていない。つまり、上記の表現型がMKのmRNAに担われている可能性があり、MK mRNAによるスポンジ効果へ繋がる展開となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経芽腫モデルマウスであるTH-MYCN Tgマウスを用いて樹立した骨髄転移再発モデルにおいて、シスプラチン治療後のsphere培養でMK+/+とMK-/-との間で表現型の違いを見出した。その結果によって、骨髄に転移した神経芽腫細胞におけるシスプラチン耐性誘導にMidkineが寄与している可能性が示されたが、in vivoでの明確な表現型は、その後のin vitro解析の拠り所となるため、非常に重要である。更に、培養で得られたsphere細胞をそのままin vitroでの機能解析に用い、シスプラチン耐性を実現するMidkineの細胞内シグナルを検討することができる。 また、直近の予備的結果からは、上記のMidkineの機能がそのmRNAに担われている可能性が示唆されてきているため、本研究申請時のテーマの一つである「Midkine mRNAによるスポンジ効果」に合流する可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
今回見出した、Midkine+/+とMidkine-/-との間で生じるsphere細胞の表現型の差(passageできるか否か)について、Midkineの作用機構を明らかにしていく。まずは、MidkineのmRNAが担い手であることを確認し、メカニズムとしてはスポンジ効果を念頭において検討していく。 直近で胚発生過程における発現パターンを報告したH1FXについては、正常細胞をトランスフォームできるかどうかを切り口として、神経芽腫への関与を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)当初想定していなかった、Midkine+/+とMidkine-/-との間の表現型の差を見出すことができ、そのメカニズムがmRNAレベルで構成されている可能性が示唆されたため、当初予定していた「MKタンパク質」の細胞内シグナル伝達解析を保留したから。
(使用計画)ヒト神経芽腫細胞株を用いて行う計画だったスポンジ効果の検討(MKのmRNAに担われる機能)を、マウスから培養したsphere細胞も用いて行う為、sphereの培養試薬や、その細胞を用いたmRNAとしての機能解析(shRNAによるノックダウン、sphereのコロニー形成等)に用いる。
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