研究実績の概要 |
細胞膜ドメインはがん細胞の悪性形質発現に極めて重要な役割を果たしているが、その機能調節機構に関する知見は乏しい。本研究では、脂質トランスポーターの発現が脂質代謝変化を誘導する分子機構並びに、脂質代謝変化が膜ドメイン機能を制御する分子機序を明らかにし、脂質輸送-脂質代謝連関ががんやその他の疾患に及ぼす影響について明らかにすることを目的としている。 ABCA1トランスポーターは、細胞膜におけるコレステロール及びリン脂質の輸送体として機能している。研究代表者らは、ABCA1が細胞膜ドメインの構造と機能に重要な役割を果たしていることを最近報告した。そこで、本年度は、がん細胞におけるABCA1の発現及び転写因子SREBPの活性化レベルを複数のヒトがん細胞を用いて解析を行った。その結果、ほとんどのがん細胞でABCA1の発現が検出されなかった一方、SREBPの活性化はほとんどの細胞で認められた。がん細胞におけるABCA1を介した脂質輸送と脂質代謝との連関を解析には、がん細胞へのABCA1の強制発現が必要であることが示唆された。 その他、コレステロール代謝制御に関する総説とABCA1の機能解析方法に関する論文を海外研究者と共同で、Journal of Lipid Research(Chang, Yamauchi, Hasan, Chang, 2017)及びMethods in Molecular Biology(Yamauchi, Yokoyama, Chang, 2017)にそれぞれ発表した。また、膜ドメインの重要な構成因子であるガングリオシドに関連する論文をScientific Reports(Yamaguchi, Yamauchi, et al. 2016)とNature Chemical Biology(Komura et al., 2016)に発表した。
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