研究課題
大腸癌細胞株を用いて、リソソーム (LysoTracker) の蛍光トレーシング化を行い、大腸癌幹細胞集団ではリソソーム活性が亢進していること、また、リソソーム活性が亢進している細胞集団は、増殖能が低く、G0/G1期の割合が多く、単一細胞からのsphere 形成能、造腫瘍能や抗癌剤抵抗性を高く保持していることを見出した。ケミカルスクリーニングを行うことで、リソソーム阻害剤としてメフロキンを同定した。メフロキン投与により、癌幹細胞集団が消失すること、大腸癌治療薬であるオキサリプラチンやイリノテカンと相乗効果をもつこと、ヒト大腸癌担癌マウスにおいて腫瘍がほぼ完全に消失することを見出した。ヒト大腸癌担癌マウスモデルを用いたアレイ解析とタンパク構造解析を行うことで、メフロキンがリソソーム経路制御因子であるRAB 5/7を標的としており、ミトコンドリア代謝を抑制し、損傷ミトコンドリアが蓄積することでミトコンドリア誘発性アポトーシスを誘導させることを見出した。RAB 5/7をknockdownすることで、メフロキンと同様に癌幹細胞分画が消失し、sphere形成能が抑制されていることを示した。ヒト大腸癌同所移植マウスモデルや腹膜播種モデルを作成し、メフロキンと大腸癌抗癌剤(イリノテカンやオキサリプラチン)併用によって皮下腫瘍モデルと同様に高い抗腫瘍効果をもつことを確認した。メフロキン治療後のマウス腫瘍の免疫組織化学染色においても、RAB5/7、癌幹細胞マーカーであるCD44v9やリソソーム関連膜タンパクであるLAMP1/2の発現が低下していた。そして、治療後のマウスモデルの血液結果や主要臓器の病理学的検討に明らかな変化、体重減少や異常行動も認めていないことより、副作用が生じないことが確認された。
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Cancer Research
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10.1158/0008-5472.