研究課題/領域番号 |
16K08622
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宮崎 早月 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (60452439)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Mafa / インスリン / 膵ベータ細胞 |
研究実績の概要 |
糖尿病の病因を解明するためには、膵ベータ細胞の主な機能であるインスリン分泌制御メカニズムをより深く解析する必要がある。本研究では、膵ベータ細胞の発生やインスリン分泌能、糖尿病の発症や進行に深く関わる転写因子Mafaを膵ベータ細胞特異的に欠損させ、この遺伝子が成熟分化の過程や機能維持においてどのような役割を果たしているかを検討することを目的としている。 インスリンプロモーター下でSV40のT抗原を発現するカセットが挿入されたトランスジェニックマウスIT-6と、Mafaノックアウトマウスをかけあわせ、MafaノックアウトIT-6マウスを得た。そして、そのマウスから膵臓を摘出し、インスリノーマを単離培養してMafaノックアウトベータ細胞株(MIN6-Mafa-KO細胞)を樹立した。この細胞は、オリジナルのMIN6細胞と比較し、コロニー形態がコンパクトであり、細胞の大きさも小さい傾向にあり、さらにグルコース応答性インスリン分泌能が著しく低下していた。 MIN6-Mafa-KO細胞が未成熟なベータ細胞の性質を示している可能性があることから、まずrescue実験を行い、Mafaの短期過剰発現あるいは長期過剰発現による機能や遺伝子発現の変化を検討することとした。今年度はMafaを発現するアデノウイルスベクターやレンチウイルスベクターを作製し、それらをMIN6-Mafa-KO細胞に感染させ短期過剰発現rescue細胞と長期過剰発現rescue細胞を作製した。今後は、これらの細胞をもちいて詳細な機能解析を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MIN6細胞にはアデノウイルスベクター(AdV)が非常に効率的に感染するため、短期過剰発現rescue細胞用に、CAG-MafaあるいはPGK-Mafaを組み込んだアデノウイルスベクターAdV-CAG-MafaとAdV-PGK-Mafaを作製した。コントロールとしてAdV-CAG-EGFPあるいはAdV-PGK-EGFPを用いることとした。AdVの発現期間は約1週間と短いため、長期過剰発現用にはレンチウイルスベクター(LentiV)をもちいることとした。レンチウイルス用にもLentiV-CAG-Mafa-IRES-puroとLentiV-PGK-Mafa-IRES-puroの2種類を作製した。コントロールとしてLentiV-CAG-EGFP-IRES-puroとLentiV-PGK-EGFP-IRES-puroをもちいることとした。 10クローン得られたMIN6-Mafa-KO細胞の中から、平均的な性質を示す2クローンを選び、それぞれにウイルスベクターを感染させ、rescue細胞を得た。AdVを感染させた短期rescue細胞(MIN6-AdV-Mafa細胞)は感染後3~4日以内に必要な実験を行うこととした。長期rescue細胞(MIN6-LentiV-Mafa細胞)は約3週間puromycinで薬剤選択を行った。今年度予定していたrescue細胞の作製は順調に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
現在、MIN6-AdV-Mafa細胞とMIN6-LentiV-Mafa細胞におけるMafaの発現を免疫染色やreal time PCR、ウエスタンブロットにて確認しているところである。今後は、これらの細胞とEGFPを発現するコントロールMIN6-Mafa-KO細胞をもちいて、グルコースだけでなくKCl、glibenclamide、exendin4、somatostatinなどの刺激に対するインスリン分泌能をELISAにて検討する。さらに、増殖力をMTT assayにて定量化し、cleaved caspase-3抗体にて免疫染色を行い、アポトーシスの割合を算出する。また、MIN6-Mafa-KO細胞のグルコース応答性インスリン分泌が著しく低いことから、電子顕微鏡にてインスリン分泌顆粒の状態を観察する予定である。 一方で、DNAマイクロアレイも行い、短期過剰発現rescue細胞と長期過剰発現rescue細胞の2群において共通に変動している遺伝子群や一方のみで変動している遺伝子群をそれぞれを抽出し、解析する予定である。
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