研究課題
研究代表者は、腸上皮細胞に発現するチロシンホスファターゼSAP-1とその基質分子である膜型分子CEACAM20により形成されるSAP-1-CEACAM20シグナルが腸管免疫の制御に関与し、このシグナルの破綻が炎症性腸疾患の増悪化に関与する可能性をこれまでに報告している。しかしながら、SAP-1の生理機能やその作用機構の詳細については十分に明らかとはなっていない。そこで、本研究申請では、チロシンホスファターゼSAP-1による腸管免疫制御機構の全容の解明を目指し、本年度以下の研究成果を得た。1) SAP-1の基質分子であるCEACAM20遺伝子破壊(KO)マウスを用い腸炎モデルを作製し、CEACAM20の欠損による腸炎の発症や重要度に与える影響について評価した。その結果、特定の薬剤誘導性の腸炎モデルの解析から、CEACAM20 KOマウスの腸炎の程度やその発症度において野生型マウスと著明な違いは認められなかった。2) SAP-1シグナル系の関連分子として、Srcファミリーキナーゼに着目し、その活性化抑制分子であるCskのKOマウスを用い、Srcファミリーキナーゼの恒常的な腸上皮細胞における活性化が腸管免疫や腸上皮の恒常性に与える影響について解析を試みた。その結果、Srcファミリーキナーゼが、腸上皮細胞の増殖、分化、運動を制御し、腸上皮細胞の恒常性維持に重要であることが明らかとなった。3) SAP-1およびCEACAM20が特定の腸内細菌の定着の制御に関与するかについて、両者のKOマウスから得られた糞便を用い、代表的な数種の腸内細菌の存在量を定量的PCR法により解析を行ったが、野生型マウスと大きな変化は認められなかった。4)CEACAM20の細胞外領域に結合する分子の探索を行い、腸内容物中に結合する蛋白質が存在する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
遺伝子改変マウスを用い、SAP-1シグナルに関連する分子の腸上皮細胞における機能解析や腸炎モデルでの解析が順調に進みつつある。また、腸内細菌とSAP-1、CEACAM20の関連解析や細胞外領域に結合する分子の探索において一定の結果が得られつつあり、これらのことから概ね本研究課題は順調に進展しつつあると考えられたため。
本年度得られた研究成果をもとに、当初の研究計画に従い研究を推進する。
すべて 2016 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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