研究課題
細胞間競合とは、同種細胞同士において細胞間境界で適応度の高い細胞が生き残り、適応度の低い細胞が排除される細胞間コミュニケーション制御機構である。細胞間コミュニケーション研究はショウジョウバエを用いた研究が先行しているが、近年哺乳類培養細胞を用いた実験でも細胞間競合現象が生じることが示された。しかし、哺乳類の細胞間競合に関与する遺伝子群や、生体内における生理学的意義についてはほとんど分かっていなかった。ショウジョウバエにおいてはHippo経路分子であるYkiが重要な役割を果たすこと示されたが、YAP1/TAZ(Ykiの哺乳類ホモログ)の細胞競合における役割は不明であった。そこで本研究では哺乳類YAP1/TAZによる細胞間コミュニケーションとその破綻病態の解析を目的とした。これまでに正常二次元培養下の哺乳類細胞株においては、YAP1活性化細胞が野生型細胞に対して「敗者」となること、マイクロアレイ解析からYAP1活性化細胞では接着関連分子の発現が低下していることを見出していた。実際に野生型細胞は接着性が強く、扁平な形態をとり、FAKの高い活性を認めた。一方で、ペトリディッシュやPolyHEMAコートしたディッシュなどの接着性の弱いあるいはない培養下では、YAP1活性化細胞が野生型細胞に対して「勝者」となることから、野生型細胞の接着性依存性の増殖能力とYAP1活性化細胞による足場非依存性増殖能力のバランスで、哺乳類細胞株における「競合」様現象が変化することを見出した。また、in vivoではYAP1発現皮膚移植を野生型マウスに移植すると移植片の縮小と剥離が観察された。これらのことからYAP1を介した細胞競合様現象の勝者と敗者は、細胞接着力の程度と周囲からの外力変化がその一因である可能性を見出した。
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FASEB J.
巻: 33 ページ: 5548-5560
doi: 10.1096/fj.201802005R.