研究課題
Atp1a2欠損ヘテロマウスで、大脳にKClを直接投与することによって誘起されるCSDの属性を比較したところ、野生型と比べてCSD誘起のKCl濃度の閾値が低下し、CSDの拡散速度が速く、DC電位の偏向からの回復が遅く, 脳波の深い抑制が見られた。さらに、高い濃度のKCl投与によって繰り返しCSDが生じるが、ヘテロマウスでのCSD発生繰り返しの頻度は野生型より高い傾向にあった。 CSDに伴う脳血流の変化には差が見られなかった。遺伝子欠損の方法が異なる2系統のマウスで、CSDの性質に違いが観察された。この結果はAtp1a2欠損ヘテロマウスがCSDをより起こし易く、その程度も野生型よりも大きいことを示しており、片頭痛のモデルマウスとして有効であることが明らかになった。一方、CSDを誘起後の脳での神経興奮の状況を調べるため、c-FOSの抗体染色を行なった。CSDを誘起した側では、皮質(特に、運動感覚野)ではほぼすべての領域でc-FOSのシグナルが観察された。加えて、大脳基底核および大脳辺縁系でもシグナルが見られた。CSDを誘起したのとは反対側の大脳半球において、c-FOSの発現が大きく低下した。一方、脊髄三叉神経核の尾および中隔核では両側でシグナル強度の差は見られなかった。これらの観察は、片頭痛の病態を考える上での新たな基盤的知見となる。ヒトの片頭痛患者で観察されるATP1A2の点突然変異3種類をマウスAtp1a2遺伝子に導入したトランスジェニックマウスを構築した。一部の系統のマウスでは、熱性痙攣への感受性が野生型よりも高かった。
2: おおむね順調に進展している
研究計画のうち29年度予定の一部を前倒して遂行した。一方28年度計画のうち、炎症マーカーの検索などの一部の実験は次年度に遂行する予定である。前倒しして行なった実験と、翌年度に繰り越した実験とは同程度の実験量であるため、概ね順調に進展したと言える。
29年度は点突然変異を導入したマウスの解析と、炎症に伴うマーカータンパクの発現解析を中心に行なう。
使用予定の実験試薬が研究計画よりも安く購入できたため、次年度に繰り越した。
繰り越した当該研究費を人件費/謝金として使用する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Brain Res.
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10.1016/j.brainres.2017.04.014.
J. Physiol. Sci.
巻: 67 ページ: 45-62
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