研究課題/領域番号 |
16K08629
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
川上 潔 自治医科大学, 医学部, 教授 (10161283)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナトリウムポンプα2サブユニット / 偏頭痛 / 家族性片麻痺性偏頭痛2型 / トランスジェニックマウス / カルシウムイメージング |
研究実績の概要 |
1 家族性片麻痺性偏頭痛2型の患者で同定されたATP1A2点突然変異を導入したトランスジェニックマウスを構築した。 (1) 代表的な3種類の点突然変異(R202Q、E700K、M731T)をマウスBACクローンに導入し、各々複数のトランスジェニックマウスを作製した。(2) 得られたマウスの熱性痙攣に対する感受性を調べた結果、野生型と比べ有意に痙攣発作の生じる時間が短いラインが得られた。また、最高血圧が有意に上昇したライン、及び心拍数が有意に増加したラインも確立することができた。(3) Atp1a2欠損マウスで解析したCSDについて、これらのTgラインでの比較解析を開始した。
2 脳内ニューロンとグリアの属性及び興奮性の比較 (1)生体内でニューロン及びグリアのCa濃度変化をGFPの蛍光で評価できるマウス(GLT―1)とAtp1a2欠損マウスとを交配し、ニューロン及びグリアのCa動態の変化を野生型と比較観察した。 (2)大脳感覚野において、200ないし400μの深さでCa濃度の変化をGFPの蛍光強度によって評価した。グリア細胞は特定の標識色素を用いて同定し、グリアと神経を別々に評価した。定常状態におけるCa濃度の変化について、ニューロン及びグリア共に有意な差は観察されなかった。 (3)脳表面にKCLを滴下することで、脱分極を誘導し、CSD波を観察したところ、CSDからの回復時間に差が生じる傾向が見られた。(4)グリア細胞の炎症性マーカーとしてIba-1の発現を抗体染色で観察したところ、Atp1a2欠損マウスでの発現が亢進していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画のうちカルシウムセンサーマウスとAtp1a2欠損マウスとの交配を行い、カルシウムイメージングによる解析は予定通り行った。ヒトの偏頭痛の変異を有するTgマウスの構築とその解析については、平成30年度予定の一部を前倒しして遂行した。また、TgマウスのCSD属性については解析を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
グリア細胞の属性の変化や点突然変異を有するマウスのCSD属性の変化については、今年度に解析を完了させる。これまで得られた実験結果を総合し、Atp1a2変異による偏頭痛発症の機序のモデルを提出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究は、前年度までに購入した試薬や機器を用いて行うことが可能であったため、物品費の支出が予定よりも定額であった。次年度使用額は平成30年度において、物品及び人件費として適切に使用する予定である。
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