研究実績の概要 |
1,ビタミンD受容体(VDR)欠損が、マウスにおけるコンカナバリンA誘導性肝炎を軽減させることを見出したが、そのメカニズムの解析の結果、肝臓の常在性Kupffer細胞や好中球などの免疫細胞における活性酸素種(ROS)産生や貪食能などの機能にVDRが重要であることを明らかにして、原著論文として報告した(Umeda et al., J Leuk Biol 2019)。同誌106巻4号の表紙に採用され、Editorialsでコメントされた。 2.一次胆汁酸ケノデオキシコール酸(CDCA)は、腸内細菌によってVDRリガンドとして作用するリトコール酸(LCA)に変換される。VDR欠損マウスにCDCA付加食を与えた場合に、野生型マウスと比較して、糞中、肝臓及び尿中総胆汁酸及びCDCA量が減少し、血漿総胆汁酸量及びLCA量が増加した。VDR欠損マウスの腎臓において胆汁酸排泄担体MRP3及びMRP4の遺伝子発現が低下していた。VDRが、生体内でCDCAやLCAの代謝・排泄に関与することを示す実験結果であり、現在投稿中である。さらにCDCAの薬理効果のVDR依存性を評価する実験として、炎症性腸疾患モデルを解析中である(第4項参照)。 3.デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)による炎症性腸疾患モデルにおいて、野生型では肝臓の炎症が認められないこと、VDR欠損では腸炎が重症化することを確認した。実験結果を発展させ、(1)VDR欠損マウスのDSS腸炎における肝臓免疫・炎症の解析、(2)欧米食を与えたDSS腸炎マウスにおける腸炎および肝臓免疫・炎症の解析を進めている。 4.胆汁酸受容体としてのVDRの機能をさらに解明するために、第2項の結果を発展させ、CDCAやLCAの経口投与のDSS腸炎への影響及びVDR依存性の解析を進めており、これらの胆汁酸の病態抑制効果の予備実験データを得ている。
|