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2016 年度 実施状況報告書

ゲノム研究に基づく関節リウマチの新規医療の基盤開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K08634
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

鈴木 亜香里  国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 副チームリーダー (00391996)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード関節リウマチ / モデルマウス / GWAS / ぺプチジルアルギニンデイミナーゼ
研究実績の概要

1.ぺプチジルアルギニンデイミナーゼタイプ4遺伝子(PADI4)欠損マウスの解析
GWASにより同定されたぺプチジルアルギニンデイミナーゼタイプ4遺伝子(PADI4)欠損マウスについて、関節リウマチモデルマウス実験を行ったところ、関節炎との関係が明確になった。しかしながら解析の結果、PADI4遺伝子の周辺にある、他のPADI遺伝子群についてもPADI4の遺伝子を欠損させることで誘導されることがわかり、機能的にも欠損を他のPADI遺伝子群が補完している可能性が高いことがわかった。そのため、関節リウマチにおけるシトルリン化タンパクの働きを明確にするためにはPADI4遺伝子のみならず、他のPADI遺伝子についても検討する必要がある。PADI遺伝子群の中でも、PADI4遺伝子とともにGWASでも異なるコホートによっては関連が示唆されているPADI2遺伝子はPADI4に次いで、関節リウマチとの関係が予想される遺伝子である。そこで、PADI2遺伝子を欠損させたマウスをもちいて、PADI2と関節リウマチの関連を解析するために現在、PADI2欠損マウスを作製中である。
2.関節炎モデルマウスの統合解析
GWAS関連遺伝子の関節炎における機能を解析するために、まずは関節炎モデルマウスとして、いくつかのよく調べられているSKGマウスの関節炎発症メカニズムをホールトランスクリプトーム解析を行い、GWAS関連遺伝子の関節炎における変化を明確にしようと考えている。具体的には、SKGマウスに関節炎を発症させ、発症前、発症初期、発症中期、発症後期とタイムコースをとり、関節、末梢血分画、脾臓等、関節リウマチと関連する組織をとり、それらの組織のRNAを回収し、ホールトランスクリプトーム解析を行う。テスト解析をおえており、今後の本解析で関節リウマチ関連遺伝子群がどのような挙動を示すかを明らかにすることができる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

PADI4遺伝子欠損マウスについては2016年に報告したこれまでの解析結果より、PADI2欠損マウスの解析が重要であるとわかったが、PADI2欠損マウスについては組換え体の作製はすでに終わっており、現在、交配後、関節炎の発症実験をテストする段階である。GWAS関連遺伝子が関節炎に関与する証拠として、欠損マウスを用いた実験は非常に有効であるが、多因子性疾患の場合はひとつの遺伝子解析を行うだけでは不十分である。GWAS関連遺伝子を包括的に理解するための実験として、モデルマウスのホールトランスクリプトーム解析を平行して実施する。これらの解析結果を用いて、疾患と遺伝子発現、GWASで同定した遺伝子の関係を明確にする。モデルマウスとしては非常によく用いられている、CIAマウスやSKGマウスをもちいて、発症を経時的に解析し、ヒトでは観測できない発症に伴う変化を調べ、GWASで同定された疾患関連遺伝子の原因遺伝子としての役割について明確にしたいと考えているが、これらのモデルマウスはすでに研究室で実施中であり、新規に立ち上げる必要性がなく、またホールトランスクリプトーム解析についても、理化学研究所内にプラットフォームを作製済みである。実際に試験データを用いて解析を行ったところ、すでに興味深い知見が得られている。以上から、当初の予定よりもさらに解析の追加を行っているが、研究は概ね順調に進んでいる、と考えている。

今後の研究の推進方策

GWAS関連遺伝子の機能解析は、多因子性疾患の場合、対象となる遺伝子の多さからも困難である。また疾患関連遺伝子について、もともと知られている遺伝子機能から疾患への関与を推察していても、発症との機能的関連を直接的に明確に出来ていないケースも多い。しかしながら、GWASで同定された疾患関連遺伝子が関節リウマチの原因であることはゲノム解析の本質から見ると明確であるが、発症機序が複雑であるため、ある遺伝子や遺伝子領域に存在する多型が疾患に結びつくかを調べるために一つひとつの遺伝子の解析を行っても、多型の効果が小さいため、疾患全体を捉えることは難しい。これは、GWAS関連遺伝子が単独で機能するよりもむしろ遺伝子同士のつながりによって疾患が発症するためと考えられる。実際にPADI4遺伝子欠損マウスの関節炎モデルマウス実験では、30%程度のスコアの減少が観察されたが、発症率に違いは見られず、単独の遺伝子の解析だけでは発症の全体像の解明は不十分である。つまり、ひとつの遺伝子が原因で発症に寄与するというよりも、遺伝子群が特定のタイミングで働くことが疾患に重要であると考えられる。疾患発症や悪化に伴って様々に変動する遺伝子群全体を網羅的に解釈し、その中でのGWAS遺伝子の位置づけを明確にすることで、それぞれの多型の影響を明らかに出来ると考えられる。そのためにも、発症の経緯をトレースすることが出来るモデルマウスを最大限に活用し、発症に伴う遺伝子発現変動を明確にし、それらの遺伝子変動の中で、GWASにより同定された関連遺伝子がどのような位置づけで変動していくのかを解明する必要がある。今後はGWAS関連遺伝子欠損マウスの解析とあわせて、モデルマウスの解析を進め、GWASにより同定された疾患関連遺伝子群のお互いのつながりを明確にし、より効果的な創薬ターゲットの創出に結びつけたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

物品費については前年度購入分のみで実験がまかなえたので、次年度以降の研究実施分として留保している。

次年度使用額の使用計画

物品費に関しては実験計画に従って、前年度分、今年度分とあわせてホールトランスクリプトーム解析に関する用途で使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Decreased Severity of Experimental Autoimmune Arthritis in Peptidylarginine Deiminase Type 4 Knockout Mice.2016

    • 著者名/発表者名
      Akari Suzuki, Yuta Kochi, Hirofumi Shoda, Yu Seri, Keishi Fujio, Tetsuji Sawada, Ryo Yamada and Kazuhiko Yamamoto
    • 雑誌名

      BMC Musculoskeletal Disorders

      巻: 17 ページ: 205-205

    • DOI

      10.1186/s12891-016-1055-2

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Decreased Severity of Experimental Autoimmune Arthritis in Peptidylarginine Deiminase Type 4 Knockout Mice2016

    • 著者名/発表者名
      鈴木 亜香里
    • 学会等名
      ASHG2016, Vancouver, Canada
    • 発表場所
      Vancouver
    • 年月日
      2016-10-18 – 2016-10-22
  • [学会発表] Decreased Severity of Experimental Autoimmune Arthritis in Peptidylarginine Deiminase Type 4 Knockout Mice2016

    • 著者名/発表者名
      鈴木 亜香里
    • 学会等名
      ESHG 49th Annual Meeting 2016, Barcelona, Spain
    • 発表場所
      Barcelona
    • 年月日
      2016-05-21 – 2016-05-24

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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